「10代が国旗をデザインした」って、なんかロマンがありますよね。アメリカの50星旗を17歳の高校生ボブ・ヘフトが作った話は前に書きましたが、実はもう1つ、10代の応募作がそのまま国旗になった国があるんです。それがアラブ首長国連邦(UAE)。今回はその19歳の物語を中心に、UAE国旗の話をしていきます。


まずは構成のおさらい

UAE国旗は、ちょっと変わった構造をしています。旗竿側に縦長の赤の帯があり、その右側に上から緑・白・黒の3つの横帯が並びます。つまり「縦+横」の組み合わせ。一般的な国旗は完全な縦三色か横三色かが多いなかで、UAEはハイブリッド型なんです。

色の意味は、それぞれ次のとおりです。

  • :エネルギーと、国のために払われた犠牲
  • :発展と繁栄、肥沃な大地
  • :平和と純粋さ
  • :威厳、そしてこの国を変えた石油

「砂漠の国」のイメージとは違って、緑と白を中心に置いた配色なのがおもしろいところです。


19歳が応募した1枚が、そのまま国旗になった

UAE国旗のデザイナーは、当時19歳のエミラティ青年、アブダッラー・ムハンマド・アル=マイナ(Abdullah Mohammed Al Maainah)。

1971年、UAEの建国が目前に迫っていたタイミングで、地元紙アル・イッティハードが「新国家の国旗デザインを募集」と告知を出しました。集まった応募作は約1,030点(資料によっては「10,000を超える」とされるものもあります)。そのなかから、19歳の彼の作品が最終選考で選ばれます。

ここからの話がちょっとぐっとくる。

当時の彼は、自分のデザインが採用されたことを事前に知らされていなかったんです。1971年12月2日の連邦結成式典の日、アブダビのムシュリフ宮殿で新しい旗が初めて掲揚されることを聞いた彼は、宮殿まで歩いて行き、フェンスの外から自分の旗が上がるのを見届けた、と後年語っています。

「自分が描いた絵が、国の旗になっていた」。10代の青年にとって、これ以上の経験はちょっと想像しにくいですよね。

その後、アル=マイナは外交官の道に進み、ロシア大使などを歴任しました。1枚の応募作が国旗になり、本人の人生も大きく変わった、というドラマがあります。


4色は「汎アラブ・カラー」

UAE国旗の4色(赤・緑・白・黒)は、いわゆる汎アラブ・カラー(Pan-Arab colors)と呼ばれるものです。

由来は1916年のアラブ反乱にさかのぼります。第一次世界大戦中、オスマン帝国に対する反乱を起こしたアラブ勢力が掲げた旗が、赤・緑・白・黒の4色でした。その後、アラブ世界で「独立」と「連帯」を象徴する色として共有されるようになり、現在では多くのアラブ諸国の国旗にこの4色のいずれかが使われています。

UAE国旗の特徴は、その4色すべてを1枚に収めたところ。多くの汎アラブ系の旗は3色構成が多いなかで、UAEは4色フルセット。「アラブ世界の一員としてのアイデンティティ」を、デザインで丸ごと表現しているわけです。

ちなみに同じ4色を使う旗には、ヨルダン、パレスチナ、スーダン、クウェートなどがあります。並べてみると、レイアウトと模様だけが違って色は同じ、というのがおもしろい。


「7つの首長国」が連邦になった日

UAEは「United Arab Emirates」、つまり首長国(emirate)の連邦です。

1971年12月2日、イギリスの保護領(トルーシャル・ステーツ)から独立して連邦が結成された当初は、次の6つの首長国でした。

  • アブダビ
  • ドバイ
  • シャルジャ
  • アジマン
  • ウムアルカイワイン
  • フジャイラ

翌1972年2月10日にラアスアルハイマが加わり、現在の7首長国体制となります(加入が遅れたのは、当時のラアスアルハイマ首長シェイク・サクルが「島嶼領有問題」で連邦に条件を出していたため、と伝えられています)。

新しい国旗が初めて掲揚されたのも、この建国の日(1971年12月2日)。アブダビのムシュリフ宮殿で、初代大統領シェイク・ザイード・ビン・スルタン・アール・ナヒヤーンの手によって掲げられました。

「国の誕生」と「国旗の誕生」と「19歳のデザイナーの人生の転機」が、同じ1日に重なっている。けっこうドラマチックな話なんです。


まとめ:シンプルなのに、ぜんぶ詰まってる

今回のUAE国旗まとめ。

  • 縦の赤+横の緑・白・黒という、ちょっと変わったハイブリッド構造
  • 4色は汎アラブ・カラー(1916年のアラブ反乱が起源)
  • デザイナーは当時19歳のアブダッラー・ムハンマド・アル=マイナ
  • 約1,030点の応募作から選ばれた(彼自身は採用を事前に知らされていなかった)
  • 1971年12月2日、6つの首長国による連邦結成と同時に初掲揚
  • 1972年2月10日にラアスアルハイマが加入して現在の7首長国体制に
  • 国の誕生と国旗の誕生が、ちょうど同じ日

10代の高校生が作った旗が採用されたアメリカと並んで、10代設計の国旗を持つ稀有な国のひとつです。