青地に、左上のユニオン・ジャック、右側に金色の盾。その盾には巻貝・ロブスター・サボテンが描かれています。タークス・カイコス諸島の旗、カリブ海のイギリス海外領土の旗です。漁業と砂漠の植物を1枚に描いた、カリブ海の自然そのものの紋章。今回はそんなタークス・カイコス諸島の旗の話です。


まずは構成のおさらい

タークス・カイコス諸島旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:青(ブルー・エンサイン)
  • 左上のカントン:ユニオン・ジャック
  • 右側(フライ側):金色の盾(タークス・カイコス諸島の紋章)

紋章の盾の中身は、以下のとおりです。

  • クイーン・コンク貝(女王巻貝):漁業
  • トゲロブスター(イセエビ):漁業
  • タークス・ヘッド・サボテン:島の植生

色とシンボルの意味は、次のとおりです。

  • :カリブ海
  • 金の盾:島の自然と産業
  • 巻貝とロブスター:主要産業の漁業
  • サボテン:島の生態系

英連邦の旗に、カリブ海の自然(貝・エビ・サボテン)を組み合わせた、典型的なイギリス海外領土の旗です。


「巻貝・ロブスター・サボテン」 ── 島の自然

タークス・カイコス諸島旗の、最も特徴的なシンボルを見ていきます。

クイーン・コンク貝

クイーン・コンク貝(Queen Conch、女王巻貝)は、大型の巻貝です。タークス・カイコスの漁業の主力であり、食用のほか装飾や貝細工にも使われます。現代もコンク貝の養殖が盛んです。

トゲロブスター

トゲロブスター(Spiny Lobster、イセエビ)は、カリブ海の漁業資源で、島の主要な輸出品となっています。

タークス・ヘッド・サボテン

タークス・ヘッド・サボテン(Turk's Head Cactus)は、島の固有のサボテンです。「トルコ人の頭」のような赤い頭部を持ち、トルコ帽(フェズ)に似た形をしています。これが「タークス(Turks)」という島名の由来になりました。

サボテンが島の名前の由来になっているというのが、タークス・カイコスの興味深い点です。


「タークス」の名前 ── トルコ帽のサボテン

国名「タークス・カイコス諸島」の由来を見ていきます。

タークス

タークス(Turks)は、タークス・ヘッド・サボテンに由来します。赤い頭部がトルコ帽(フェズ、オスマン帝国の帽子)に似ていることから、「トルコ人の頭のサボテン」がそのまま「タークス諸島」という名前になりました。

カイコス

カイコス(Caicos)は、ルカヤン語(先住民言語)の「カヤ・ヒコ(島々の連なり)」に由来し、「島の連なり」を意味します。

国旗に描かれたサボテンが、そのまま島名の由来になっている。シンボルと名前が直接つながっているのです。


1968年 ── 紋章入りの旗

タークス・カイコス諸島旗の制定の歴史を見ていきます。

1965年9月28日、紋章制定

1965年9月28日、王室令で紋章が制定されました。巻貝・ロブスター・サボテンの盾を中心に、両側にフラミンゴ、上にペリカンを配したものです。

1968年、現代版の旗

そして1968年、現在のデザインが採択されました。青地に、左上のユニオン・ジャックと右側の紋章を組み合わせた旗です。

「初期の誤解エピソード」

この旗には、初期の紋章にまつわる有名な誤解があります。初期の植民地バッジ(1870年代〜1968年)には2つの塩の山が描かれていましたが、その一つに陰影で扉のような模様が描き加えられ、ロンドンの担当者がそれを「氷の家(イグルー)」と取り違えた、という逸話です。現在のコンク貝・ロブスター・サボテンの紋章は、このバッジを置き換えた1965年制定の別物にあたります。カリブ海の島に氷の家が描かれていた、という珍事として語られています(諸説あり)。

カリブ海なのにイグルーが描かれた、というのが、タークス・カイコス紋章の有名な逸話です。


タークス・カイコス諸島という領土

タークス・カイコス諸島の基本情報です。

  • 正式名:タークス・カイコス諸島(Turks and Caicos Islands)
  • 首都:コックバーン・タウン(Cockburn Town、グランド・ターク島)
  • 面積:約948km²
  • 人口:約4.6万人
  • 公用語:英語
  • 法的地位:イギリスの海外領土

「40の島々」

タークス・カイコス諸島は、約40の島々からなります。タークス諸島とカイコス諸島の2つの島群に分かれ、有人島は約8つ、グランド・ターク島に首都が置かれています。

「ビーチの楽園」

タークス・カイコス諸島は、カリブ海の高級リゾートとして知られます。グレース・ベイは「世界一美しいビーチ」に何度も選ばれており、ダイビングやシュノーケリングも盛んで、観光業が経済の柱になっています。

「タックスヘイブン」

タークス・カイコス諸島は、オフショア金融の地でもあります。無税の制度を持ち、国際金融の拠点となっています。


まとめ:巻貝とロブスターとサボテン

今回のタークス・カイコス諸島旗のまとめです。

  • 青地(ブルー・エンサイン)に、左上のユニオン・ジャックと右側の金色の盾(紋章)
  • 1965年9月28日、王室令で紋章を制定、1968年に現代版の旗を採択
  • 紋章はクイーン・コンク貝(女王巻貝)とトゲロブスター、タークス・ヘッド・サボテン
  • 巻貝とロブスターは漁業(主要産業)、サボテンは島の植生を表す
  • 「タークス」はタークス・ヘッド・サボテン(トルコ帽に似た赤い頭部)に由来
  • 「カイコス」はルカヤン語「島々の連なり」に由来
  • 初期の植民地バッジで塩の山が誤ってイグルー(氷の家)のように描かれた逸話(現紋章とは別。諸説あり)
  • 約40の島々、2つの島群(タークスとカイコス)、首都はコックバーン・タウン
  • グレース・ベイは「世界一美しいビーチ」に何度も選出
  • タックスヘイブン、面積約948km²、人口約4.6万人

カリブ海の自然を、貝とエビとサボテンに込める。タークス・カイコス諸島の旗は、島の名前の由来となったサボテンと漁業を、金の盾に描いた1枚です。