緑と黄色が交互に5本並び、左上の赤い四角に白い星。トーゴの国旗です。汎アフリカ色(緑・黄・赤)と、左上にリベリア国旗・アメリカ国旗を思わせる赤いカントンという、アフリカと大西洋を結ぶデザインになっています。しかも国民的アーティスト1人がデザインした旗でもあります。今回はそんなトーゴ国旗の話です。
まずは構成のおさらい
トーゴ国旗の構成は、次のとおりです。
- 横5本の帯(上から):緑・黄・緑・黄・緑(緑から始まり、緑で終わる)
- 左上のカントン:赤い長方形(縦はストライプ3本分=旗の縦幅の3/5、横は黄金比1:ϕ≈1:1.618で設計)
- 赤い四角の中央:白い5角星(希望の星)
色とシンボルは、汎アフリカ色にもとづいています。
- 緑:森林、農業、希望
- 黄:天然資源、信仰、成熟
- 赤:独立のために流された血
- 白い星:希望の星、平和、知性、光
- 5本の帯:トーゴの5つの行政地域
汎アフリカ色と、アメリカ・リベリア式のカントンという、アフリカと新大陸のシンボルを融合した珍しい構成です。
1960年、独立直前に決定
トーゴ国旗の誕生は、1960年4月、独立直前のことでした。
フランス領トーゴランドからの独立
トーゴは、アフリカ分割時代に長く植民地支配を受けた地域です。1884-1914年はドイツ領トーゴラント(ドイツ帝国植民地)、1916-1960年はフランス領トーゴ(第一次大戦後、フランスの委任統治・信託統治)を経て、1960年4月27日に独立し、トーゴ共和国が成立しました。
1960年4月27日、独立と国旗
そして1960年4月27日の独立宣言と同時に、法律第60-14号で新しい国旗が正式に採用されました。独立の直前にデザインが決定され、新生国家の象徴として、独立当日の1960年4月27日に正式採用されたのです。独立と国旗が、同じ日に生まれたという、典型的なアフリカ脱植民地化期のパターンです。
デザイナー ── ポール・アヒィ
トーゴ国旗を設計したのは、ポール・アヒィ(Paul Ahyi、1930-2010)です。
20世紀アフリカ最も重要な芸術家のひとり
ポール・アヒィは、トーゴ出身の画家・彫刻家・詩人でした。20世紀のアフリカでもっとも重要な芸術家のひとりとして国際的に評価され、パリのエコール・デ・ボザールで美術を学んでいます。絵画・彫刻・モザイク・詩を手がけるマルチタレントなアーティストで、2009年にはUNESCO芸術家賞を受賞しました。
国旗デザインコンテストで選出
1960年、トーゴ政府は独立を控えて国旗デザインコンテストを開催しました。多数の応募作のなかから、アヒィの作品が選出されます。彼の他の代表作には、ロメ独立記念碑や、トーゴ各地の壁画・モザイクがあります。国旗のデザインが、国を代表するアーティストの代表作のひとつになったという、アヒィのキャリアの象徴的な瞬間でした。
なぜ「リベリア風」のデザインか
トーゴ国旗を見ると、横ストライプと左上の赤い四角と白い星という構成は、リベリア国旗を強く思わせます。
| トーゴ | リベリア | アメリカ | |
|---|---|---|---|
| ストライプ | 5本(緑・黄交互) | 11本(赤・白交互) | 13本(赤・白交互) |
| カントン | 赤・白い星1つ | 青・白い星1つ | 青・白い星50個 |
| 起源 | 1960 | 1847 | 1777 |
リベリアという「先輩」
なぜリベリア風なのかというと、リベリアが「アフリカ唯一の、植民地化されなかった国」だったからです。1822年にアメリカ植民協会がアメリカの解放奴隷を西アフリカに移住させて建国を準備し、1847年7月26日にリベリア共和国が独立を宣言しました。アフリカ大陸で最初の共和制国家であり、アメリカ国旗を模した「星条旗風」の国旗を持っています。リベリアはアフリカの自由のシンボルとして、1960年代のアフリカ独立運動の精神的な先輩でした。
アヒィの選択
アヒィは、汎アフリカ色(緑・黄・赤)の理念と、リベリアの形式(横ストライプと星のカントン)を融合させました。汎アフリカ色はアフリカ統一の理念を、リベリア風の構成はアフリカ自由独立の伝統を表します。アフリカ統一主義とアフリカ独立の伝統を組み合わせてトーゴの旗にするという、理念とフォーマットを別の出所から取った、極めて知的なデザインです。
5本の帯 ── 5つの地域
国旗の5本のストライプは、トーゴの5つの行政地域を表します。
| 地域名 | 中心都市 |
|---|---|
| サバネ州(Savanes) | ダパオン |
| カラ州(Kara) | カラ |
| 中央州(Centrale) | ソコデ |
| 高原州(Plateaux) | アタクパメ |
| 海岸州(Maritime) | ロメ(首都) |
5本の帯が、北のサバナから南の海岸まで、5つの地域を順に表すという解釈もあります(公式の対応は厳密ではないが、概念的にはそう理解されている)。国土の地理的多様性を、5本のストライプに圧縮したという、シンプルかつ明快な象徴です。
「汎アフリカ色」── エチオピアの3色
トーゴ国旗の緑・黄・赤は、汎アフリカ色(Pan-African colors)です。
エチオピアが起源
エチオピア国旗(緑・黄・赤)は、アフリカで唯一、ヨーロッパ列強の植民地化を完全に免れた国の旗です。3,000年以上の独立国家としての歴史を持ち、1896年のアドワの戦いではイタリアを撃退して、アフリカで唯一ヨーロッパ列強に勝利しました。「アフリカの自由の象徴」として、20世紀のアフリカ諸国に強い影響を与えています。
1960年代の独立ラッシュ
1960年代、アフリカ諸国が次々と独立し、その多くがエチオピアの3色を採用しました。ガーナ(1957年)は緑・黄・赤に黒星、ギニア(1958年)は赤・黄・緑、マリ(1959年)は緑・黄・赤、セネガル(1960年)は緑・黄・赤に緑星、トーゴ(1960年)は緑・黄に赤と白星、カメルーン(1960年)は緑・赤・黄です。汎アフリカ色はアフリカの統一と独立のシンボルとして、20世紀のアフリカ独立運動の共通言語になりました。
トーゴという国
トーゴの基本情報です。
- 正式名:トーゴ共和国(République togolaise)
- 首都:ロメ(ギニア湾沿い)
- 面積:約5.7万km²(東西に細長い)
- 人口:約840万人
- 公用語:フランス語
- 主要民族:エウェ族、カビエ族など
- 宗教:キリスト教(約42%)、伝統宗教(アニミズム、約37%)、イスラム教(約14%)。ソースによっては伝統宗教が50%近くとする推計もあり、アフリカでも伝統宗教の比率が特に高い国のひとつ
「細長い国」
トーゴの地理的特徴は、南北約540km、東西わずか50-150kmという細長さです。アフリカで最も細長い国のひとつで、北はブルキナファソ、南はギニア湾(大西洋)に面し、東はベナン、西はガーナに挟まれています。5本のストライプが、北から南への細長い国土を象徴するという見方も、地理的にぴったりです。
「奴隷海岸」の歴史
トーゴが面するギニア湾岸は、歴史的に「奴隷海岸」(Slave Coast)と呼ばれた地域です。16-19世紀には大西洋奴隷貿易の中心地のひとつで、多数のアフリカ人がアメリカ大陸へ強制移送されました。その歴史が、現代のアフリカ系アメリカ人やカリブ人のルーツになっています。奴隷貿易の歴史を経て、独立国家として再生したアフリカという意味で、トーゴ国旗の赤い色は、奴隷貿易と独立闘争で流された血の両方を象徴している、と解釈されることもあります。
ちなみに:「希望の星」
トーゴ国旗の白い5角星は、公式に「希望の星」(Étoile de l'Espérance)と呼ばれます。平和、知性、光、そして新生国家の希望を表します。赤い血の四角の中に、白い希望の星が輝くという構図は、過去の犠牲と未来の希望を、左上の小さな空間に凝縮したデザインです。
赤=過去の血、白い星=未来の光というのは、ドイツ国旗の「黒・赤・金(過去・血・未来)」とも共通する構図です。同じ20世紀後半に独立した両国の旗が、図らずも似た思想構造を持つのは興味深いところです。
まとめ:汎アフリカの理想と、リベリアの形式
今回のトーゴ国旗のまとめです。
- 緑・黄・緑・黄・緑の5本横帯+左上の赤い四角+白い5角星
- 1960年4月27日の独立当日に法律第60-14号で正式採用、カントンは正方形ではなく黄金比の長方形
- デザイナーはトーゴの国民的アーティスト、ポール・アヒィ(1930-2010)
- 緑=森林・農業・希望、黄=天然資源・信仰・成熟、赤=独立の血、白星=平和・知性・光
- 5本の帯=トーゴの5つの行政地域(サバネ・カラ・中央・高原・海岸)
- 汎アフリカ色(緑・黄・赤)はエチオピア国旗が起源
- 構成はリベリア国旗(1847年、アフリカで唯一の脱植民地国家)を模した
- 1884-1914年ドイツ領トーゴランド、1916-1960年フランス領トーゴを経て独立
- ギニア湾岸は歴史的に「奴隷海岸」と呼ばれた地域
- 国土はアフリカで最も細長い国のひとつ(南北約540km、東西50-150km)
汎アフリカの理想を、リベリアの形式で表現した——トーゴの国旗は、アフリカと大西洋を結ぶ独立の物語を、5本の帯と1つの星に込めた1枚です。