赤地に、左上の青い長方形。その中に白い太陽と12の光線が描かれています。台湾(中華民国)の旗、青天白日満地紅旗(せいてんはくじつまんちこうき)です。東アジアの係争的地位を持つ地域の旗で、孫文(孫中山)の三民主義を象徴し、もとは中国本土の国旗でもありました。今回はそんな台湾旗の話です。
まずは構成のおさらい
台湾(中華民国)旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:赤(満地紅=大地を覆う紅)
- 左上:青い長方形(青天=青空)
- 青い長方形の中央:白い太陽(白日)と12の光線
色とシンボル(三民主義)の意味は、以下のとおりです。
- 青(青天):民族主義・自由
- 白(白日):民権主義(民主主義)・平等
- 赤(満地紅):民生主義・友愛、革命の血
- 12の光線:12ヶ月と12の時辰(古代中国の2時間単位)、国家の絶え間ない前進
青天・白日・満地紅が三民主義を表す。孫文の革命思想を体現した旗です。
「青天白日満地紅」 ── 三民主義
台湾(中華民国)旗の核心を見ていきます。
三民主義
三民主義は、孫文(孫中山)の革命思想です。
- 民族主義(青):民族の独立
- 民権主義(白):民主主義・民権
- 民生主義(赤):人民の生活・福祉
3色が三民主義を表す。フランス(自由・平等・友愛)と並ぶ、理念を色に込めた旗です。
12の光線
白い太陽の12の光線は、12ヶ月と、12の時辰(古代中国の時間単位、1時辰は2時間)を表します。そこには、国家と国民の絶え間ない前進・自己向上という意味が込められています。
時間の流れが、国家の永続的な発展を表す。そんなシンボリズムです。
1895-1928年 ── 革命から国旗へ
台湾(中華民国)旗の起源を見ていきます。
陸皓東
青天白日旗は、1895年、陸皓東(Lu Hao-tung)がデザインしました。興中会(孫文の反清革命組織)のシンボルとして、1895年2月に香港で発表されたものです。陸皓東は同年、革命活動で処刑され、中華民国のために最初に犠牲になった人物とされています。
孫文が赤を追加
そして1906年、孫文が「満地紅」(赤い大地)を追加しました。陸皓東のデザインである「青天白日」に赤い地を加え、「青天白日満地紅旗」が完成したのです。この赤は、革命家の流した血を表しています。
1928年、中華民国の国旗
そして1928年、中華民国(国民党政府)が正式な国旗として採用しました。中国本土を統治する中華民国の国旗であり、当時は中国大陸全土の旗でした。
1945-1949年 ── 台湾への移転
台湾(中華民国)旗の現代の経緯を見ていきます。
1945年、台湾へ
1945年、第二次大戦が終結しました。日本が台湾を中華民国に返還し(日本統治は1895-1945年)、台湾でも青天白日満地紅旗が掲揚されるようになります。
1949年、国共内戦
そして1949年、国共内戦が起こります。毛沢東率いる中国共産党が中国本土を制圧し、蒋介石率いる中華民国政府(国民党)が台湾に撤退しました。こうして中国本土は中華人民共和国(五星紅旗)、台湾は中華民国(青天白日満地紅旗)という構図になります。
もとは中国本土の国旗が、台湾の旗になった。それが現代の状況です。
「中華民国」と「中華人民共和国」
そして、2つの「中国」が並び立つことになりました。
| 中華民国(台湾) | 中華人民共和国(中国本土) | |
|---|---|---|
| 旗 | 青天白日満地紅旗 | 五星紅旗(赤地に黄色い星) |
| 統治 | 台湾・澎湖・金門・馬祖 | 中国本土 |
| 成立 | 1912年 | 1949年 |
中華人民共和国の記事(五星紅旗)と対をなす。それが台湾旗です。
国際的地位
そして、台湾の国際的地位は複雑です。中華人民共和国は「一つの中国」を主張し、台湾を自国の一部と見なしています。国連では1971年に中華人民共和国が中国の代表権を獲得し、中華民国(台湾)は脱退しました。多くの国が台湾を国家承認していませんが、台湾は事実上独立した政治体として機能しています。
国際的地位が複雑な地域として、コソボ・西サハラ・パレスチナと並びます。なお諸説あり、評価は政治的立場により大きく異なります。
台湾という地域
台湾の基本情報です。
- 正式名:中華民国(Republic of China、通称:台湾)
- 首都:台北(Taipei)
- 面積:約3.6万km²
- 人口:約2,340万人
- 公用語:中国語(国語・標準中国語)、台湾語・客家語・先住民言語も
- 法的地位:係争的地位(事実上の独立した政治体)
「フォルモサ」 ── 美しい島
台湾の古い呼称が、フォルモサ(Formosa)です。16世紀、ポルトガル人が「Ilha Formosa(美しい島)」と呼んだことに由来し、「麗しの島」を意味します。
「半導体大国」
台湾は、世界の半導体産業の中心です。TSMC(台湾積体電路製造)は世界最大の半導体受託製造企業で、世界の半導体の約6割を生産するとされています。その戦略的重要性から、「シリコン・シールド(半導体の盾)」とも呼ばれます。
「民主化の歴史」
台湾の現代政治を見ると、1949-1987年は戒厳令時代(国民党一党支配)でしたが、1987年に戒厳令が解除され、1996年に初の直接総統選挙が行われました。今ではアジアで最も民主的な地域のひとつとされています。
「日本との深い関係」
台湾と日本は、歴史的に深い関係にあります。1895-1945年の日本統治時代を経て、現代も親日的な地域として知られ、東日本大震災の際には多額の義援金が寄せられました。
まとめ:三民主義の青天白日、係争の旗
今回の台湾(中華民国)旗のまとめです。
- 赤地(満地紅)に、左上の青い長方形(青天)と白い太陽と12の光線(白日)
- 「青天白日満地紅旗」
- 1895年2月、陸皓東が青天白日旗を香港で発表(興中会のシンボル)
- 陸皓東は同年処刑、中華民国のために最初に犠牲になった人物
- 1906年、孫文が赤い地(満地紅)を追加
- 1928年、中華民国(国民党政府)が正式国旗に(当時は中国本土の旗)
- 青は民族主義、白は民権主義(民主主義)、赤は民生主義の三民主義
- 12の光線は12ヶ月と12の時辰(国家の絶え間ない前進)
- 1945年、日本から台湾返還、1949年の国共内戦で中華民国政府が台湾に撤退
- 中国本土は中華人民共和国(五星紅旗)、台湾は中華民国(青天白日満地紅旗)
- 国際的地位は複雑、多くの国が国家承認していないが事実上独立した政治体
- 古称「フォルモサ(美しい島)」、ポルトガル人が命名
- TSMCなど世界の半導体の約6割を生産、「シリコン・シールド」
- 1987年に戒厳令解除、1996年に初の直接総統選挙、アジアで最も民主的な地域のひとつ
- 1895-1945年は日本統治、現代も親日的
- 評価は政治的立場により大きく異なる(諸説あり)
孫文の三民主義を、青天白日満地紅に込める。台湾(中華民国)の旗は、20世紀中国革命の理念を体現し、現代も複雑な国際的地位を持つ1枚です。