濃紺の地に、左上にフランス国旗、中央に錨の形をした白い文字、それを囲む5つの星。フランス領南方南極地域の旗です。インド洋の南の孤島群と、南極大陸の一部からなるフランス海外領土の旗で、定住者のいない、アザラシとペンギンの地でもあります。そして「アデリーペンギン」の名のふるさとでもある1枚。今回はそんなフランス領南方南極地域の旗の話です。
まずは構成のおさらい
フランス領南方南極地域旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:濃紺(南極海・南極周辺の海)
- 左上のカントン:フランス国旗(白い縁取り)
- 中央:錨の形をした白いT.A.A.Fの文字+5つの白い星
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 濃紺:南の海
- 錨の形の文字「T.A.A.F」:Terres Australes et Antarctiques Françaises(フランス領南方南極地域)。遠い島々の海洋統治を表します
- 5つの星:5つの地区
錨の文字と5つの星を濃紺の地に配した、フランスの最果ての領土の旗です。
「錨の形の文字」 ── 海の統治
フランス領南方南極地域旗の、中心のシンボルを見ていきます。
T.A.A.Fのモノグラム
中央には、白い文字でT.A.A.Fが描かれています。これはフランス語のTerres Australes et Antarctiques Françaisesの頭文字で、その文字が錨の形にデザインされています。遠く離れた島々を、海洋を通じて統治することの象徴です。領土名の頭文字が錨のかたちになっている、洒落たデザインといえます。
5つの星=5つの地区
文字を囲むのは5つの星です。領土を構成する5つの地区を表すとされますが、公式の布告には明記されていません。その5つとは、ケルゲレン諸島、クローゼー諸島、サンポール島とアムステルダム島、アデリーランド、エパルス諸島(散在諸島)です。バラバラに散らばった5つの地区を、5つの星が1つにまとめるというイメージです。
「アデリーペンギンのふるさと」
フランス領南方南極地域には、意外な繋がりがあります。
アデリーランドと探検家
5つの地区の1つが、アデリーランド(Adélie Land)です。南極大陸にあるフランスの主張地域で、探検家デュモン・デュルヴィルが、妻アデルにちなんで命名しました。
ペンギンの名の由来
そして、有名な話があります。このアデリーランドにちなんで、アデリーペンギンが名付けられました。つまり、探検家の妻の名が南極の土地の名となり、それがペンギンの名になったのです。世界中で愛されるアデリーペンギンの名が、この領土の地名に由来するという、ロマンのある繋がりです。
「人の住まない、自然の聖域」
フランス領南方南極地域の特徴を見ていきます。
定住者なし
この領土には、恒久的に住む人はいません。いるのは研究基地の科学者や職員のみで、ケルゲレン諸島のポール=オ=フランセや、アデリーランドのデュモン・デュルヴィル基地などが拠点となっています。
世界遺産の自然
そのいっぽうで、自然は豊かです。広大な海洋保護区があり、世界遺産「フランス領南方地域の陸と海」に登録されています。キングペンギン、アザラシ、アホウドリの一大繁殖地でもあります。ケルゲレン諸島は「荒涼の島々」とも呼ばれる絶海の孤島です。
南極条約による凍結
アデリーランドについては、イギリス領南極地域と同じく、1959年の南極条約により領有権の主張が「凍結」されています。
フランス領南方南極地域という領土
フランス領南方南極地域の基本情報です。
- 正式名:フランス領南方南極地域(Terres australes et antarctiques françaises、TAAF)
- 行政の中心:サン=ピエール(レユニオン島)から統治
- 人口:定住者なし(季節的に科学者ら)
- 法的地位:フランスの海外領土
「5つのバラバラな地区」
この領土は、地理的に分散しています。インド洋南部の孤島群(ケルゲレン、クローゼー、サンポール&アムステルダム)、南極大陸のアデリーランド、そしてマダガスカル周辺のエパルス諸島(散在諸島)からなります。
「エパルス諸島の領有問題」
なお、政治的に繊細な点もあります。エパルス諸島は、マダガスカルなどが領有を主張しています。評価は政治的立場で分かれます(諸説あり)。
まとめ:錨の文字と5つの星、最果ての領土
今回のフランス領南方南極地域旗のまとめです。
- 濃紺地(南の海)+左上にフランス国旗+中央に錨の形の白い文字「T.A.A.F」+5つの白い星
- 「T.A.A.F」=Terres Australes et Antarctiques Françaisesの頭文字、錨の形(海洋統治の象徴)
- 5つの星=5つの地区(ケルゲレン・クローゼー・サンポール&アムステルダム・アデリーランド・エパルス諸島)とされる(公式布告に明記なし)
- 2007年2月23日に採択
- アデリーランドは探検家デュモン・デュルヴィルが妻アデルにちなみ命名、アデリーペンギンの名の由来
- 定住者なし、研究基地の科学者のみ(ポール=オ=フランセ、デュモン・デュルヴィル基地など)
- 世界遺産の海洋保護区、キングペンギン・アザラシ・アホウドリの繁殖地、ケルゲレン諸島は「荒涼の島々」
- アデリーランドの領有権は南極条約で凍結
- エパルス諸島はマダガスカルなどが領有を主張(諸説あり)
- レユニオン島から統治、人口は定住者なし
錨の形の文字と、5つの星。フランス領南方南極地域の旗は、インド洋の孤島から南極まで散らばる最果ての領土を、海の錨と地区の星に込めた1枚です。