青地、左上にユニオン・ジャック、右側にトーチを持つライオンの紋章、そして支えるのはオットセイとペンギン。サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島の旗、南大西洋の南極に近いイギリス海外領土の旗です。定住者のいない、氷と野生動物の島で、探検家シャクルトンが眠る島でもあります。今回はそんなサウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島旗の話です。


まずは構成のおさらい

この旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:青(ブルー・エンサイン)
  • 左上のカントン:ユニオン・ジャック
  • 右側(フライ側):紋章

紋章の構成は、以下のとおりです。

  • :白と青のひし形と緑の山形の上に、トーチを持つ金のライオンと2つの金の星
  • クレスト(盾の上):トナカイ
  • 支え手:オットセイとマカロニペンギン
  • 標語:「Leo Terram Propriam Protegat(ライオンよ、自らの地を守れ)」

色とシンボルの意味は、次のとおりです。

  • 青・白・緑:氷・雪・草
  • ライオン:イギリス(トーチは探検を表します)
  • 2つの星:ジェームズ・クックの紋章に由来
  • トナカイ・オットセイ・ペンギン:島の動物

南極に近い島の動物たちを描いた、自然あふれる紋章の1枚です。


「キャプテン・クックと、サンドイッチ伯爵」

この島の名前の、面白い由来を見ていきます。

ジェームズ・クックが命名

1775年、ジェームズ・クックがこの島に到達し、命名しました。サウスジョージアはジョージ3世にちなんで、サウスサンドウィッチ諸島はスポンサーのサンドイッチ伯爵にちなんで名付けられています。

あの「サンドイッチ」と同じ伯爵

ここが面白いところで、この名はあの第4代サンドイッチ伯爵ジョンにちなみます。食べ物の「サンドイッチ」の語源になった、あの伯爵と同じ人物なのです。ハワイもクックが「サンドウィッチ諸島」と名付けており、これも同じ伯爵にちなんでいます。食べ物のサンドイッチと南大西洋の島が、同じ伯爵にちなむという意外な繋がりです。紋章の2つの星も、クックの紋章に由来しています。


「トナカイのクレスト」 ── いなくなった動物

紋章にまつわる、ちょっと切ない話を見ていきます。

トナカイの群れ

盾の上に描かれているのはトナカイです。これは、かつてサウスジョージア島にいた2つのトナカイの群れに由来します。トナカイはノルウェーの捕鯨者が持ち込んだものでした。

今はもういない

しかし現在、トナカイは島にいません。島の在来の生態系を守るため、後に取り除かれたのです(諸説あり)。それでも紋章にはトナカイが残っています。いなくなった動物が、今も旗の紋章に残るという歴史の名残です。


「シャクルトンが眠る島」

サウスジョージアの、探検史上の聖地としての姿を見ていきます。

エンデュアランス号の伝説

アーネスト・シャクルトンの南極探検は、この島と深く結びついています。エンデュアランス号が氷に閉ざされて沈没したのち、シャクルトンらは小舟でサウスジョージアに渡り、島を踏破して捕鯨基地にたどり着きました。全員が生還した、探検史上に残る奇跡の救出劇です。

グリトビケンに眠る

そしてシャクルトンの最期も、この島にあります。シャクルトンは後の探検中に亡くなり、サウスジョージアのグリトビケンに埋葬されました。かつての捕鯨基地グリトビケンです。国旗の探検のトーチが、シャクルトンの島で灯り続けているのです。


サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島という領土

この領土の基本情報です。

  • 正式名:サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島(South Georgia and the South Sandwich Islands)
  • 行政の中心:キングエドワードポイント(King Edward Point)
  • 面積:約3,900km²
  • 人口:定住者なし(研究者・政府職員など約30人前後)
  • 法的地位:イギリスの海外領土

「定住者のいない島」

この島は、定住人口がゼロです。恒久的に住む人はおらず、研究基地の職員や政府職員のみが滞在しています。

「野生動物の楽園」

この島は、南極圏の野生動物の宝庫です。巨大なキングペンギンのコロニーがあり、オットセイ・ゾウアザラシ・アホウドリなどが暮らしています。フォークランド諸島と並ぶ、ペンギンと海獣の島です。

「領有問題」

そして政治的に繊細な点もあります。フォークランド諸島と同じく、アルゼンチンもこの島の領有を主張しており、アルゼンチンでは「イスラス・ヘオルヒアス・デル・スール」などと呼ばれています。1982年のフォークランド紛争では、この島も舞台の1つになりました。評価は政治的立場によって分かれます(諸説あり)。


まとめ:トーチを持つライオン、シャクルトンの島

今回のサウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島旗のまとめです。

  • 青地(ブルー・エンサイン)に、左上のユニオン・ジャックと右側の紋章
  • 紋章はトーチを持つ金のライオンと2つの星、クレストにトナカイ、支え手にオットセイとマカロニペンギン
  • 標語「Leo Terram Propriam Protegat(ライオンよ、自らの地を守れ)」
  • 青・白・緑は氷・雪・草、ライオンはイギリス、トーチは探検
  • 1775年、ジェームズ・クックが到達・命名
  • サウスジョージアはジョージ3世、サウスサンドウィッチはサンドイッチ伯爵にちなむ
  • 食べ物の「サンドイッチ」と同じ第4代サンドイッチ伯爵(ハワイも同じ由来で「サンドウィッチ諸島」と命名)
  • 2つの星はクックの紋章に由来
  • トナカイのクレストは、かつていた(後に取り除かれた)トナカイの群れに由来(諸説あり)
  • 探検家シャクルトンのエンデュアランス号の生還劇の舞台、シャクルトンはグリトビケンに埋葬
  • 定住者なし(研究者など約30人)、面積約3,900km²
  • キングペンギン・オットセイ・ゾウアザラシ・アホウドリの楽園
  • フォークランドと同じくアルゼンチンも領有を主張(諸説あり)

トーチを持つライオンと、南極の動物たち。サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島の旗は、人の住まない氷と野生動物の島を、探検の記憶とともに刻んだ1枚です。