青地に白い斜め十字(サルタイア)。スコットランドの旗、セント・アンドリュース・クロス(聖アンドリュー十字)です。イギリスを構成する4つの構成国のひとつの旗です。832年、戦いの前の空に白い十字の雲が現れたという伝説から生まれた、世界で最も古い旗のひとつ。そしてユニオン・ジャックの青い地の元でもある1枚です。今回はそんなスコットランド旗の話です。
まずは構成のおさらい
スコットランド旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:青
- 白いサルタイア:斜め十字(X字)、聖アンドリュー十字
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 青:空、832年の伝説の空
- 白い斜め十字:聖アンドリューがX字の十字架で殉教したことに由来します
きわめてシンプルな青地に白い斜め十字という、ヨーロッパ最古級の旗です。
「832年、空に現れた十字」 ── 聖アンドリューの伝説
スコットランド旗の、世界的に有名な誕生伝説を見ていきます。
アサルスタンフォードの戦い
832年、アサルスタンフォードの戦い(Battle of Athelstaneford)が起こりました。ピクト人とスコット人の連合軍(アンガス王)が、ノーサンブリアのアングル人軍(アサルスタン王)と戦った戦いです。場所はイースト・ロージアンで、ピクト・スコット軍は数で劣勢でした。
聖アンドリューの夢
戦いの前夜、アンガス王が勝利を祈ると、聖アンドリューが夢に現れ、勝利を約束したと伝えられています。
そして戦いの朝、青い空に白い斜め十字の雲が現れました。ピクト・スコット軍はこれを神の徴と見て士気が上がり、勝利したといいます。
この空に現れた白い十字が聖アンドリュー十字であり、スコットランド旗の起源です。デンマークの「空から降ってきた旗」、ラトビアの「戦士の血」と並ぶ、ヨーロッパの戦場の旗の伝説です。
聖アンドリュー
聖アンドリュー(Saint Andrew)は、イエス・キリストの十二使徒の1人で、スコットランドの守護聖人です。X字の十字架で殉教しましたが、これは「キリストと同じ十字架は畏れ多い」としてX字を選んだためと伝えられます。このX字が、聖アンドリュー十字となりました。使徒の殉教の十字架が、スコットランドの旗になったというシンボリズムです。
「世界最古の旗のひとつ」
スコットランド旗の、歴史的地位を見ていきます。
ヨーロッパ最古級
セント・アンドリュー十字は、世界で最も古く継続使用されている主権旗のひとつとされます。832年の伝説に始まり、記録上は1542年頃の紋章登録簿に登場します。デンマークのダンネブロー、オーストリアの赤白赤と並ぶ、ヨーロッパ最古級の旗です。ウェールズの赤い龍(1300年)と並ぶ、英国構成国の古い旗だといえます。
ユニオン・ジャックの元
スコットランド旗の、世界的影響を見ていきます。
ユニオン・ジャックの構成
ユニオン・ジャック(イギリス国旗)は、3つの十字から成り立っています。イングランドの聖ジョージ十字(白地に赤十字)、スコットランドの聖アンドリュー十字(青地に白の斜め十字)、そしてアイルランドの聖パトリック十字(白地に赤の斜め十字)です。ユニオン・ジャックの青い地は、スコットランド旗にあたります。スコットランド旗は、世界で最も知られた旗ユニオン・ジャックの基礎なのです。
1707年、連合
1707年、スコットランドとイングランドが連合し、グレートブリテン王国が成立しました。両国の旗を組み合わせてユニオン・ジャックが作られ、以後スコットランド旗は、ユニオン・ジャックの一部として世界中に広まりました。
スコットランドという構成国
スコットランドの基本情報です。
- 正式名:スコットランド(Scotland、スコットランド・ゲール語:Alba)
- 首都:エディンバラ(Edinburgh)
- 最大都市:グラスゴー(Glasgow)
- 面積:約7.8万km²
- 人口:約550万人
- 公用語:英語・スコットランド・ゲール語・スコットランド語
- 法的地位:イギリスの構成国
「もうひとつの旗」 ── ライオン・ランパント
スコットランドには、もうひとつの旗があります。ライオン・ランパント(Lion Rampant)です。黄色地に赤い立ち上がるライオンを描いたスコットランド王室の紋章旗で、公式にはスコットランド王(=イギリス王)専用とされますが、スポーツ応援などで広く使われています。国旗(サルタイア)と王室旗(ライオン・ランパント)の2つがあるのが、スコットランドです。
「スコットランド独立運動」
スコットランドには、現代の課題もあります。2014年、スコットランド独立住民投票が行われ、独立反対55%、賛成45%で独立は否決されました。しかしブレグジット後、独立論が再燃しています。スコットランド民族党(SNP)が独立を主張しており、国旗のサルタイアが独立運動のシンボルにもなっています。諸説あり、評価は政治的立場によります。
「バグパイプ、キルト、ウイスキー」
スコットランドには、世界的に有名な文化が数多くあります。伝統楽器のバグパイプ、タータン(格子模様)のスカート状の民族衣装キルト、世界的なウイスキーの産地として知られるスコッチ・ウイスキー、そして伝説の怪物で知られるネス湖・ネッシーなどです。
「ケルト諸国」
スコットランドは、ケルト諸国のひとつでもあります。ウェールズ、アイルランド、ブルターニュ、コーンウォールと並び、ゲール語(ケルト系言語)の伝統を持っています。
ちなみに:「11月30日、聖アンドリューの日」
スコットランドのナショナル・デーを見ていきます。
聖アンドリューの日
11月30日は、聖アンドリューの日(St Andrew's Day)です。スコットランドの守護聖人の日であり、国民的祝日でもあります。この日には、サルタイアが全土で掲揚されます。国旗の聖アンドリュー十字が、守護聖人の日のシンボルにもなっているのです。
まとめ:空に現れた十字、世界最古級の旗
今回のスコットランド旗のまとめです。
- 青地に白い斜め十字(サルタイア、聖アンドリュー十字)
- 832年、アサルスタンフォードの戦いの前夜の伝説に由来
- アンガス王が祈り、聖アンドリューが夢に現れて勝利を約束、朝に青空に白い十字の雲が出現
- 聖アンドリュー(キリストの十二使徒)がX字の十字架で殉教したことに由来
- 記録上は1542年頃の紋章登録簿に登場
- 世界で最も古く継続使用される主権旗のひとつ(ヨーロッパ最古級)
- ユニオン・ジャックの青い地はスコットランド旗(1707年連合で組み込まれる)
- 青は空、白い斜め十字は聖アンドリュー十字
- もうひとつの旗「ライオン・ランパント」(黄地に赤いライオン、王室紋章旗)
- 2014年独立住民投票で反対55%・賛成45%、独立は否決
- ブレグジット後に独立論が再燃
- バグパイプ・キルト・スコッチウイスキー・ネス湖
- ケルト諸国(ウェールズ・アイルランド・ブルターニュ・コーンウォールと並ぶ)
- 11月30日は聖アンドリューの日(守護聖人の日)
- 首都エディンバラ、面積約7.8万km²、人口約550万人
空に現れた聖アンドリューの十字。スコットランドの旗は、世界最古級の旗であり、ユニオン・ジャックの基礎となった、ヨーロッパで最も古い伝説を持つ1枚です。