公式の旗はフランス三色旗です。しかし非公式の紋章は、ペリカンがハイビスカスとホウオウボクを咥えて飛び、翼に島の境界石碑、下に2つの手が塩袋を持つというものです。サン・マルタン(フランス側)の旗は、カリブ海のサン・マルタン島北部、フランス海外準県の旗です。1つの島を、フランスとオランダが分割統治するという世界でも稀な状況を持つ1枚でもあります。今回はそんなサン・マルタン旗の話です。
まずは構成のおさらい
公式旗
公式旗はフランス国旗で、青・白・赤の縦三色です。
非公式の集合体紋章(2010年版)
サン・マルタン集合体の紋章は、次のとおりです。
- 中央:飛ぶペリカン(ハイビスカス=ブーゲンビリアとホウオウボク=Flamboyantを咥える)
- ペリカンの翼:島の境界石碑(フランス・オランダ国境の象徴)
- 下部:2つの手が塩袋を持つ(伝統的な塩採取産業)
- 背景:島の風景
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- ペリカン:島の国鳥で、フランス側・オランダ側の共通シンボル
- ハイビスカス・ホウオウボク:島の代表的な花
- 境界石碑:1648年のフランス・オランダ分割を象徴
- 塩袋+2つの手:伝統産業の塩採取と、両国民の協力
1つの島を2つの国が分け合う、独自の物語を持つ紋章です。
「1つの島、2つの国」
サン・マルタン島の、世界的に独特な状況を見ていきます。
1648年、コンコルディア条約
1648年3月23日、コンコルディア条約(Treaty of Concordia)が結ばれました。フランスとオランダがサン・マルタン島を平和的に分割したのです。1つの島を、2つの主権国家が共有する稀な例であり、その状態は約400年間、紛争なく続いています。
ピース・オブ・ザ・ワールド
サン・マルタン島は、陸上国境を持つ世界で最も小さな2国家として知られています。島の面積はわずか87km²で、そのうちフランス領が北部の約53km²、オランダ領が南部の約34km²です。境界線にはバリアがなく、自由に往来できます。フランスのEUと、オランダ王国構成国(独自地位)の境界が、ここにある。それが現代の状況です。
異なる文化、自由な境界
フランス側はサン・マルタンと呼ばれ、フランス語が話され、通貨はユーロです。オランダ側はシントマールテンと呼ばれ、オランダ語と英語が話され、通貨はオランダ・ギルダーと米ドルです。物価・税制・雰囲気はそれぞれ異なり、観光客は両方を自由に体験できます。
2007年7月15日 ── 海外準県に
サン・マルタン(仏側)の、現代の地位を見ていきます。
グアドループから分離
2007年7月15日、サン・マルタンがグアドループから分離しました。それ以前はグアドループ海外県の一部でしたが、2007年からフランス海外準県(COM)として独立した地位を得ています。これはサン・バルテルミーと同時の分離でした。
紋章の変遷
紋章は短期間で変化しています。2007年から2009年は白地にペリカンを描いた紋章(前の紋章)でしたが、2010年に現代の紋章(ペリカン+花+境界石碑+塩袋)が採用されました。短期間で2つのデザインを試したのが、サン・マルタン(仏)の特徴です。
ペリカンと塩 ── 島の伝統
サン・マルタン紋章の、重要なシンボルを見ていきます。
ペリカン ── 島の国鳥
ペリカンは、サン・マルタン島の伝統的な国鳥です。海岸でよく見られ、島の自然のシンボルとなっています。オランダ側のシントマールテンの紋章にも登場します。両側の島が共有するシンボル、それがペリカンです。
塩 ── 伝統産業
塩採取は、サン・マルタンの歴史的な主要産業でした。17世紀から20世紀にかけて塩湖から塩を採取し、ヨーロッパや北米に輸出していました。島内には「Salt Pond(塩の池)」という地名も残っています。紋章で塩袋を持つ2つの手は、フランス側とオランダ側の協力を表します。塩を分け合う2つの手は、両領土の友好の象徴なのです。
サン・マルタン(仏側)という領土
サン・マルタンの基本情報です。
- 正式名:サン・マルタン集合体(Collectivité de Saint-Martin)
- 首都:マリゴ(Marigot)
- 面積:約53km²
- 人口:約3.2万人
- 公用語:フランス語
- 法的地位:フランスの海外準県
サン・マルタンの日
国名の由来は、サン・マルタン(Saint Martin of Tours、聖マルティヌス、316-397)です。1493年11月11日、コロンブスが島を発見しました。その発見日が聖マルティヌスの日だったため、こう命名されたのです。発見日が聖人の日にあたるという点は、ドミニカ国(日曜日=主の日)やクリスマス島(クリスマスの日)と並ぶパターンです。
2017年ハリケーン・イルマ
サン・マルタンは、21世紀に大きな悲劇を経験しました。2017年9月6日、カテゴリー5のハリケーン・イルマが島を直撃したのです。島の建物の95%が損壊し、空港も大きな被害を受けました。カリブ海史上最大級のハリケーンでした。
まとめ:1つの島、2つの国の旗
今回のサン・マルタン(仏側)旗のまとめです。
- 公式旗:フランス三色旗
- 非公式紋章:飛ぶペリカン+ハイビスカス+ホウオウボク+翼に境界石碑+下に2つの手と塩袋
- 2007年7月15日、グアドループから分離、フランス海外準県に
- 2007-2009年は前の紋章(白地に静止ペリカン)、2010年現代版採用
- ペリカン=島の国鳥(オランダ側シントマールテンと共通)、塩袋=伝統産業
- 1648年3月23日、コンコルディア条約でフランスとオランダが島を分割
- 1つの島を2つの主権国家が共有する稀な例、約400年紛争なし
- フランス領:北部約53km²、オランダ領:南部約34km²
- 「陸上国境を持つ世界で最も小さな2国家」、境界線に物理的バリアなし
- 1493年11月11日、コロンブスが聖マルティヌスの日に発見、命名
- 2017年ハリケーン・イルマで島の建物の95%が損壊
- 公用語はフランス語、人口約3.2万人、首都マリゴ
塩を分け合う2つの手、1つの島の半分。サン・マルタンの旗は、400年続くフランス・オランダの平和的共存を、ペリカンと塩袋に込めた1枚です。