白・青・赤の3本の横帯。ロシアの国旗、世界最大の国土を持つ国の旗です。1693年、ピョートル大帝がオランダで見たオランダ国旗に着想を得て採用したと伝えられます。そしてこの旗は、世界の汎スラヴ色(白・青・赤)の母でもあります。ブルガリア・スロバキア・セルビア・クロアチアなど、東欧諸国の国旗の起源となった1枚です。今回はそんなロシア国旗の話です。


まずは構成のおさらい

ロシア国旗の構成は、次のとおりです。

  • 横3本の帯(上から):白・青・赤
  • 比率:2:3

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • :高貴、誠実、平和、聖性
  • :忠実、誠実、聖母マリア、空
  • :勇気、愛、祖国、血

3色のシンプルな構成を持つ、世界で最も古い近代国旗のひとつです。


1693年、ピョートル大帝とオランダ

ロシア国旗の起源を見ていきます。

「西欧化のピョートル」

ピョートル大帝(Peter the Great、1672-1725)は、ロシア帝国の初代皇帝です。「西欧化」を推進した人物で、自らオランダやイギリスで大工として働き、造船技術を学びました。

1693年、オランダ船と出会う

1693年、ピョートル大帝はアルハンゲリスク港で、オランダ国旗を掲げた商船を目にします。赤・白・青の横三色の旗です。彼はこの旗こそ海洋国家の標準だと考えました。

ロシアにも同様の海軍旗が必要だとピョートルが決断したことが、ロシア国旗の起源です。

1694年、Saint Peter号

1694年、ピョートルはオランダからフリゲート艦Saint Peter号を購入します。ロッテルダムで建造されたこの船は、白・青・赤の旗を掲げてアムステルダムを出港しました。オランダの新聞は「ロシアの44門フリゲート艦が白青赤の旗を掲げて停泊」と報じています。

「色の順序を変える」

そしてピョートルは、色の順序を意図的に変更しました。オランダが上から赤・白・青であるのに対し、ロシアは上から白・青・赤としたのです。

同じ3色でありながら、順序を変えてロシア独自の旗にしたというのが、現代のロシア国旗です。

1705年、商船旗として正式採用

1705年、ピョートル大帝はこの旗を商船旗(Civil Ensign)として正式に採用します。ロシア帝国の商船が掲揚する旗となりました。ただし当時の軍艦旗は別で、聖アンドリュー旗(白地に青い斜め十字)が使われていました。


「汎スラヴ色」 ── 世界中のスラヴ国家の起源

ロシア国旗の、世界的な影響を見ていきます。

1848年プラハ・スラヴ会議

1848年、汎スラヴ主義の最初の大会議となるプラハ・スラヴ会議が開かれました。オーストリア・ハンガリー帝国、オスマン帝国、ロシア帝国に分割されていたスラヴ民族の代表が集まり、スラヴ民族の連帯を確認しました。この会議で、ロシア国旗の白・青・赤が「汎スラヴ色」として認定されたのです。

汎スラヴ色を採用した国

構成
ロシア(元祖、1696/1705)白・青・赤の横三色
ブルガリア(1879)白・緑・赤(青→緑)
セルビア赤・青・白(順序逆)
クロアチア赤・白・青
スロバキア白・青・赤+紋章(同じ)
スロベニア白・青・赤+紋章
チェコ白・赤+青三角(変形)

ロシアの3色が東欧諸国の独立旗の起源となったことは、フランス三色旗と並ぶ、世界の国旗系統樹のひとつです。


1991年 ── ソ連崩壊と国旗復活

ロシア国旗の、20世紀の物語を見ていきます。

1917-1991年、ソ連旗

1917年のロシア革命を経てソ連が成立すると、国旗は赤旗(ハンマー&鎌に赤い星)になりました。以後74年間、白青赤の旗は禁止されます。

1991年、ソ連崩壊

1991年8月22日、クーデターの失敗後、ボリス・エリツィンは赤旗を捨て、白青赤の3色旗を復活させました。ピョートル大帝時代の旗の復権です。

1993年12月、正式制定

1993年12月11日、エリツィンの大統領令によって白・青・赤の横三色が正式に制定され、以後、現代まで継続しています。

74年の社会主義時代を超えて、300年前のピョートル大帝の旗が復活したというのが、現代ロシア国旗の物語です。


ロシアという国

ロシアの基本情報です。

  • 正式名:ロシア連邦(Российская Федерация)
  • 首都:モスクワ(Moscow)
  • 面積:約1,710万km²(世界最大)
  • 人口:約1.44億人
  • 公用語:ロシア語
  • 宗教:ロシア正教(約63%)

「世界最大の国土」

ロシアは、世界最大の国土を持つ国です。アジアとヨーロッパにまたがり、国土の約77%はシベリア(ウラル山脈以東)が占めます。11のタイムゾーンを持っています。

「世界第9位の人口」

人口は約1.44億人で、世界第9位です。

「クレムリン」

首都モスクワの中心にあるのがクレムリンです。ロシア語で「要塞」を意味し、ロシア大統領の公邸となっています。周辺には赤の広場、聖ワシリイ大聖堂、レーニン廟があります。

「ソ連からロシアへ」

20世紀から21世紀のロシアを振り返ると、1917年から1991年までがソビエト連邦、1991年から現在がロシア連邦です。ウラジーミル・プーチン大統領が、2000年から2008年、そして2012年から現在まで国を率いています。

国旗の赤は伝統的な勇気の色ですが、現代の解釈はさまざまだという、複雑な現代政治があります。なお評価については諸説あり、政治的立場によって異なります。

「2022年、ウクライナ侵攻」

そして2022年2月24日、ロシアはウクライナに侵攻しました。国際社会の制裁を受け、欧州諸国の安全保障情勢も大きく変化しました。

国旗の白は平和を表しますが、現実には戦争があるというのが、現代ロシアです。


ちなみに:「他の白青赤系国旗」

ロシア国旗と似ている国旗を見ていきます。

オランダ・フランス・ルクセンブルク

構成順序
ロシア白・青・赤
オランダ赤・白・青
フランス青・白・赤
ルクセンブルク赤・白・青

3色は同じでも、配置と順序で区別されるというのが、世界の白青赤系国旗の特徴です。


まとめ:300年前のピョートル大帝、汎スラヴの母

今回のロシア国旗のまとめです。

  • 白・青・赤の横三色(2:3)
  • 1693年、ピョートル大帝がアルハンゲリスクでオランダ船の旗を見て発想
  • 1694年、オランダから購入したフリゲート艦Saint Peter号が白青赤の旗を掲揚
  • 1705年、ピョートルが商船旗として正式採用
  • 1848年のプラハ・スラヴ会議で「汎スラヴ色」として認定
  • ブルガリア・セルビア・クロアチア・スロバキア・スロベニア・チェコなど、東欧諸国の国旗の起源
  • 1917-1991年のソ連時代は赤旗(ハンマー&鎌)で、74年間禁止
  • 1991年8月、エリツィンが白青赤旗を復活
  • 1993年12月11日、正式制定
  • 白=高貴・誠実、青=忠実・聖母マリア、赤=勇気・愛・祖国
  • 世界最大の国土(約1,710万km²)、11のタイムゾーン
  • 人口約1.44億人、世界第9位
  • 首都モスクワのクレムリンが大統領公邸
  • 2022年2月24日、ウクライナ侵攻

オランダの旗から、世界の汎スラヴ色の母へ。ロシアの国旗は、フランス三色旗と並ぶ世界の国旗系統樹の起源のひとつであり、300年の歴史を持つ近代国旗の代表です。