青地に、左上にユニオン・ジャック、右側に緑のドレスの女性がハープと十字架を抱く紋章。モントセラトの旗、カリブ海のイギリス海外領土の旗です。この女性はエリン、アイルランドを擬人化した姿。カリブ海なのにアイルランド系の文化が根づく「カリブのエメラルド島」であり、そして火山噴火で首都が埋もれた島でもある1枚。今回はそんなモントセラト旗の話です。
まずは構成のおさらい
モントセラト旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:青(ブルー・エンサイン)
- 左上のカントン:ユニオン・ジャック
- 右側(フライ側):モントセラト紋章
紋章の構成は、以下のとおりです。
- 緑のドレスの女性:エリン(アイルランドの擬人化)
- 女性が抱く金のハープ:アイルランドの伝統的シンボル
- 女性が抱く黒い十字架:キリスト教
- 紋章の下部:シャムロック(三つ葉)、アイルランドの象徴
英連邦旗にアイルランドを象徴する女性を組み合わせた、カリブ海では意外なアイルランド色の1枚です。
「エリン」── アイルランドを抱く女性
モントセラト旗の、最も特徴的なシンボルを見ていきます。
エリンとは
紋章の中心にいるのが、緑のドレスの女性エリンです。これはアイルランドを擬人化した女性の姿であり、モントセラトの初期の移住者の多くがアイルランド系であることを反映しています。
ハープと十字架
エリンは、2つのものを抱えています。1つは金のハープで、アイルランドの伝統的シンボルです。もう1つは黒い十字架で、島の主要な宗教であるキリスト教を表します。十字架を抱く姿は、モントセラト人のキリストへの愛を象徴しています。
シャムロック
そして紋章の下には、シャムロック(三つ葉)が描かれています。これは島のアイルランドのルーツを示すものです。モントセラトでは入国時に、パスポートへ緑のシャムロックのスタンプが押されます。
国旗にも、入国スタンプにも、政府庁舎にもシャムロック。徹底したアイルランド色です。
「カリブのエメラルド島」── アイルランド移民の歴史
モントセラトの、世界でも珍しい文化的背景を見ていきます。
1632年、アイルランド系の移住
1632年、モントセラトはイングランド王国の植民地になりました。トマス・ワーナーがアイルランド系カトリック教徒をモントセラトに送り、さらにバージニア植民地からもアイルランド系移住者が移ってきました。
70%がアイルランド系
1678年のリーワード諸島の国勢調査では、白人住民の70%がアイルランド系の祖先を持つと答えました。これは当時のイギリス領で最もアイルランド系の比率が高い数字でした。
カリブ海なのにアイルランド系が多数派だった島。だからこそ「カリブのエメラルド島」と呼ばれています。
聖パトリックの日が祝日
そして今に残る伝統があります。モントセラトはカリブ海で唯一、聖パトリックの日(3月17日)を公式の祝日にしています。アイルランドの祝日が、カリブの島の祝日になっているのです。
1909年・1962年 ── 旗の制定
モントセラト旗の制定史を見ていきます。
紋章の起源
モントセラト紋章(エリンの紋章)は、1909年から使われ始めました。エリンとハープを描いた紋章です。
1962年、現在の旗
そして1962年、現在のブルー・エンサインの旗になりました。以後、現代まで使用されています。
モントセラトという領土
モントセラトの基本情報です。
- 正式名:モントセラト(Montserrat)
- 首都:プリマス(Plymouth、※事実上機能停止)/行政の中心はブレイズ(Brades)
- 面積:約102km²
- 人口:約4,500〜5,000人
- 公用語:英語
- 法的地位:イギリスの海外領土
「火山に埋もれた首都プリマス」
モントセラトの現代の悲劇が、スーフリエール・ヒルズ火山です。1995年から噴火活動が活発化し、1997年には首都プリマスが火山灰と火砕流に埋もれました。このことから「カリブのポンペイ」とも呼ばれています。島の南半分が立入禁止区域となり、人口は約1.3万人から数千人に激減しました。
国旗は変わらず翻るが、首都は火山に埋もれた。近年の歴史です。
「法律上の首都が機能していない珍しい例」
そして世界でも珍しい状況があります。プリマスは今も法律上の首都ですが、人が住めません。事実上のゴーストタウンが、なお正式な首都となっているのです。現在は新しい町リトル・ベイの建設が進んでいます。
「ビートルズのプロデューサーの録音スタジオ」
モントセラトには、意外な音楽史もあります。ジョージ・マーティン(ビートルズのプロデューサー)がAIRスタジオを設立し、数々の名盤がここで録音されました。スタジオは1989年のハリケーン・ヒューゴで被災しています。
まとめ:ハープを抱く女性、カリブのエメラルド島
今回のモントセラト旗のまとめです。
- 青地(ブルー・エンサイン)に、左上のユニオン・ジャックと右側のモントセラト紋章
- 紋章は、緑のドレスの女性エリン(アイルランドの擬人化)が金のハープと黒い十字架を抱く
- ハープはアイルランドの伝統的シンボル、十字架はキリスト教、下部のシャムロックはアイルランドのルーツ
- 入国時にパスポートへ緑のシャムロックのスタンプが押される
- 1632年、イングランド植民地になり、トマス・ワーナーがアイルランド系カトリックを送る
- 1678年の国勢調査で白人住民の70%がアイルランド系(当時のイギリス領で最高比率)
- 「カリブのエメラルド島」と呼ばれ、カリブ海で唯一、聖パトリックの日を公式祝日にしている
- 紋章は1909年から、現在のブルー・エンサインの旗は1962年から
- スーフリエール・ヒルズ火山が1995年から活発化、1997年に首都プリマスが埋もれた(カリブのポンペイ)
- 島の南半分が立入禁止区域、人口が約1.3万人から数千人に激減
- プリマスは今も法律上の首都だが人が住めない(事実上のゴーストタウン)、行政の中心はブレイズ
- ジョージ・マーティン(ビートルズのプロデューサー)のAIRスタジオがあった
- 面積約102km²、人口約4,500〜5,000人
ハープを抱く、アイルランドの女性。モントセラトの旗は、カリブ海に根づいたアイルランド系移民の歴史を、エメラルド島の象徴に込めた1枚です。