淡い青地に、ヘラクレスの2本の柱に囲まれた紋章。メリリャの旗です。北アフリカにあるスペインの自治都市の旗で、アフリカ大陸にありながらスペインが統治し、モロッコに囲まれた飛び地です。ただしモロッコも領有権を主張しており、帰属をめぐる立場は両国で異なります。紋章には「Non Plus Ultra(これより先はなし)」、スペイン本国の標語とは正反対の言葉が刻まれた1枚。今回はそんなメリリャ旗の話。
まずは構成のおさらい
メリリャ旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:淡い青(ペールブルー)
- 中央:メリリャ紋章
紋章の主な要素は、以下のとおりです。
- 2本の柱:ヘラクレスの柱(「Non Plus Ultra(これより先はなし)」)
- 短剣を投げる男:グスマン・エル・ブエノ
- 城とライオン:カスティーリャ王家
- ドラゴン:グスマンの武勇
ヘラクレスの柱に囲まれた紋章の、青い旗。スペインの自治都市の旗です。
「ヘラクレスの柱」 ── 世界の果て
メリリャ旗の、最も興味深いシンボルを見ていきます。
ヘラクレスの柱とは
紋章を支えるのが、2本のヘラクレスの柱です。ギリシャ神話で、ヘラクレスがジブラルタル海峡に立てた2本の柱で、かつて世界の果てと信じられた境界です。
「これより先はなし」
柱には言葉が書かれています。「Non Plus Ultra(これより先はなし)」です。これは、ここが世界の果て、これより先には何もないという古代の警告でした。
スペイン本国とは正反対
ここが面白いところで、スペイン本国の標語は正反対です。スペイン国章の標語は「Plus Ultra(より先へ)」。コロンブスの新大陸発見後、スペインは「より先へ」に変えました。しかしメリリャは、古い「Non Plus Ultra(これより先はなし)」を保持しています。
スペインは「より先へ」、メリリャは「これより先はなし」。対照的な標語の物語です。
紋章の物語 ── メディナ・シドニア公爵家
メリリャ紋章の由来を見ていきます。
1497年、メリリャ占領
メリリャ紋章は、メディナ・シドニア公爵家のものです。1497年、メリリャを占領した軍事作戦に資金を出した家であり、メリリャは1497年からスペイン領、つまり500年以上のスペイン領です。
グスマン・エル・ブエノ
紋章上部に描かれた、短剣を投げる男がグスマン・エル・ブエノです。初代公爵の祖先で、1296年のタリファ防衛の英雄。標語は「Præferre Patriam Liberis Parentem Decet(親は子より祖国を優先すべし)」です。
1497年の占領者の家の紋章が、今もメリリャの旗に。500年の歴史です。
1995年 ── 自治都市に
メリリャ旗の制定について見ていきます。
1995年3月13日、旗を採択
1995年3月13日、メリリャがスペインの自治都市になり、旗を採択しました。それまではマラガ県の一部で、1995年3月14日にメリリャ自治憲章が成立しています。
長くマラガ県の一部だったメリリャが、1995年に自治都市に。それが現代の地位です。
メリリャという領土
メリリャの基本情報です。
- 正式名:メリリャ自治都市(Ciudad Autónoma de Melilla)
- 面積:約12km²
- 人口:約8.6万人
- 公用語:スペイン語(ベルベル語=タマジクト語も広く使われる)
- 法的地位:スペインの自治都市
「アフリカにあるスペイン・EU領」
メリリャは、独特の地位を持ちます。北アフリカの、モロッコに囲まれた飛び地で、地中海に面しています。アフリカ大陸にあるスペイン領・EU領であり、セウタと並ぶスペインの北アフリカ自治都市です。
「モロッコとの領有問題」
メリリャには、政治的に繊細な問題があります。モロッコがメリリャ(とセウタ)の領有を主張する一方、スペインは1497年からの領有を主張しています。評価は政治的立場で分かれます(諸説あり)。
「ヨーロッパとアフリカの境界」
メリリャは、現代の課題も抱えています。EUとアフリカの陸の境界であり、移民・難民をめぐる国境フェンスで知られます。ヨーロッパとアフリカが接する場所です。
「3つの文化が交わる街」
メリリャは、多様な文化を持つ街でもあります。キリスト教・イスラム教・ユダヤ教・ヒンドゥー教が共存し、モデルニスモ建築でも知られます。ガウディの弟子エンリケ・ニエトの建築が多く、バルセロナに次ぐモデルニスモ建築の街といわれます。
まとめ:ヘラクレスの柱、アフリカのスペイン
今回のメリリャ旗まとめ。
- 淡い青地+中央にメリリャ紋章
- 紋章を支える2本のヘラクレスの柱、「Non Plus Ultra(これより先はなし)」
- スペイン本国の標語「Plus Ultra(より先へ)」とは正反対(古い標語を保持)
- 紋章はメディナ・シドニア公爵家のもの(1497年のメリリャ占領に資金を出した家)
- 短剣を投げる男=グスマン・エル・ブエノ(1296年タリファ防衛の英雄)
- 城とライオン=カスティーリャ王家、ドラゴン=グスマンの武勇
- 1995年3月13日、自治都市になり旗を採択(それまでマラガ県の一部)
- 北アフリカ・モロッコに囲まれた飛び地、地中海に面する
- アフリカ大陸にあるスペイン領・EU領(セウタと並ぶ)
- モロッコが領有を主張、スペインは1497年からの領有を主張(諸説あり)
- EUとアフリカの陸の境界、国境フェンスで知られる
- キリスト教・イスラム教・ユダヤ教・ヒンドゥー教が共存、モデルニスモ建築の街
- 面積約12km²、人口約8.6万人
ヘラクレスの柱と「これより先はなし」。メリリャの旗は、アフリカ大陸にある500年来のスペイン領を、古代神話の世界の果てのシンボルに込めた1枚です。