11本の赤と白の横帯、左上に青い四角と白い星。アメリカ星条旗に最も似た、世界唯一の国旗です。19世紀、アメリカの解放奴隷が西アフリカに渡って建国した、アフリカ大陸最初の独立共和国でもあります。トーゴやマレーシアなど多くの国旗のモデルになった、隠れた影響力を持つ1枚です。今回はそんなリベリア国旗の話です。
まずは構成のおさらい
リベリア国旗の構成は、次のとおりです。
- 横11本の帯(上から):赤・白を交互に(赤6本、白5本)
- 左上のカントン(青い四角):白い5角星
- 比率:10:19
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 赤と白の11本の帯:リベリア独立宣言の署名者11人
- 赤:勇気、独立闘争の血
- 白:道徳的卓越
- 白い星:ローン・スター、アフリカ最初の独立共和国
- 青いカントン:アフリカ大陸
アメリカ星条旗の縮小版にアフリカ独立のシンボルを重ねた、世界で最も独特な歴史背景を持つ国旗です。
「アメリカ星条旗との関係」
リベリア国旗には、世界的に有名な類似性があります。
星条旗 vs リベリア旗
アメリカ星条旗とリベリア国旗を比べると、次のようになります。
| アメリカ | リベリア | |
|---|---|---|
| ストライプ | 13本(赤・白) | 11本(赤・白) |
| カントンの色 | 青 | 青 |
| 星の数 | 50(現在) | 1(白い1つの星) |
| 採用 | 1777年(13星)/1960年(50星) | 1847年 |
1つの星があるか、50の星があるかというのが、両国旗の最大の区別です。
なぜ似ているか
リベリア国旗が星条旗に似ているのは、国家の起源そのものに理由があります。リベリアはアメリカの解放奴隷が建国した国であり、アメリカからアフリカへ渡った人々の国家です。アメリカへの感謝と、アフリカでの新生が融合したデザインなのです。世界で最も明確に、他国(アメリカ星条旗)の歴史的影響を色濃く受け継いだ国旗といえます。
アメリカ植民協会 ── 解放奴隷をアフリカへ
リベリア国旗の背景には、世界史上でも特異な経緯があります。
アメリカ植民協会
アメリカ植民協会(American Colonization Society、ACS、1816年設立)は、アメリカの解放奴隷・自由黒人を西アフリカに移住させることを目的とした団体でした。その理由は複雑で、人道的な側面と人種隔離主義の側面の両方がありました。ジェームズ・マディソンやアンドリュー・ジャクソンなど、アメリカ大統領も支持しています。
1822年、リベリア入植
1822年、最初のアメリカ解放奴隷が現在のリベリアに入植しました。アフリカ西海岸に植民地を建設したもので、「Liberia」という名はラテン語の「Liber(自由)」に由来し、「自由の地」を意味します。
1847年7月26日、独立
そして1847年7月26日、リベリア共和国が独立を宣言しました。アフリカで最初の独立共和国であり、アメリカ植民協会から独立してACSの管理も完全に離れます。アメリカ大陸では、アメリカ合衆国に次ぐ2番目の独立共和国でした。アフリカ大陸で最も古い独立国だというのが、リベリアの誇りです。
1847年8月24日、国旗採択
そして1847年8月24日、リベリア国旗が正式に採択されました。国旗をデザイン・縫製したのは7人の女性委員会で、委員長はスザンナ・エリザベス・ルイス(Susannah Elizabeth Lewis)です。ジョセフ・ジェンキンス・ロバーツ知事(後の初代大統領)が依頼しました。7人の女性が国旗を作ったというのは、ハイチ(4人の女性)やフィリピン(3人の女性)と並ぶ、ラテンアメリカ・アフリカ独立における女性の遺産です。
11本の帯 ── 独立宣言の署名者11人
リベリア国旗の11本のストライプには、意味があります。
「11人の署名者」
国旗の11本の横帯は、リベリア独立宣言の署名者11人を表しています。
- ジョセフ・ジェンキンス・ロバーツ(初代大統領)
- スティーヴン・アレン・ベンソン
- ジョン・N・ルイス
- ヒラリー・ティージ
- サミュエル・ベンディクト
- ベヴァリー・R・ウィルソン
- エフライム・タイトラー
- エリヤ・ジョンソン
- ジェームズ・S・ペイン
- リチャード・E・マーフィー
- ジョン・デイ
11人が11本のストライプに対応しているわけで、これはアメリカ国旗の13本のストライプ(13植民地)と同じ発想です。
「アメリカに対するオマージュ」
そして、アメリカ国旗からの差別化も意図されています。アメリカが建国13植民地を表す13本であるのに対し、リベリアは独立宣言の11署名者を表す11本です。アメリカに似ているが、独自のアイデンティティを示しているのです。
「ローン・スター」 ── 孤独な星
リベリア国旗の白い星について見ていきます。
1つの星
アメリカが50州を表す50の星であるのに対し、リベリアは1つの星です。これは「ローン・スター(Lone Star、孤独な星)」と呼ばれ、アフリカで最初の独立共和国の象徴を表すシンボリズムです。
「Liberia is the Lone Star State」
リベリアには、「ローン・スター国家」という愛称があります。アメリカのテキサス州も「ローン・スター州」として知られており、両者は無関係であるものの、星のシンボリズムが共通しています。1つの星がアフリカ大陸全体の自由を象徴するというのが、リベリアの誇りです。
リベリアという国
リベリアの基本情報です。
- 正式名:リベリア共和国(Republic of Liberia)
- 首都:モンロビア(Monrovia、アメリカ大統領ジェームズ・モンローにちなむ)
- 面積:約11.1万km²
- 人口:約530万人
- 公用語:英語(アフリカ大陸で英語が公用語の主要国のひとつ)
- 宗教:キリスト教(約86%、主にプロテスタント)
「モンロビア」 ── アメリカ大統領にちなむ首都
首都の名前モンロビア(Monrovia)は、第5代アメリカ大統領ジェームズ・モンロー(James Monroe、在任1817-1825)に由来します。モンローは植民協会を支持しており、「Monro + via」で「モンローの道」を意味します。世界で唯一、アメリカ大統領の名前がつけられた他国の首都であり、アメリカとの深い結びつきを象徴しています。
「アフリカ最古の独立国」
リベリアは、アフリカ大陸で最初の独立共和国です。1847年7月26日に独立しました。アフリカが19世紀後半から20世紀後半までヨーロッパ植民地化の時代を経るなかで、リベリアとエチオピアだけが植民地化を免れたのです。エチオピアとリベリアの2国だけがアフリカで最古の独立を保ったことは、汎アフリカ主義・汎アフリカ色の起源としても重要です。
「アメリコ・ライベリアン」と「先住民族」
リベリアには、複雑な民族構成があります。アメリカ解放奴隷の子孫であるアメリコ・ライベリアン(Americo-Liberian)が人口の約5%を占め、クペレ、バサ、グレボ、クル、マンディンゴなど16以上の民族からなる先住アフリカ民族が約95%を占めます。
歴史的には、アメリコ・ライベリアンが政治・経済を支配してきました。アメリカ解放奴隷の子孫が現地アフリカ人を抑圧するという、奴隷から支配者への転換が起こり、その支配は1980年のクーデターまで続きました。
「内戦の傷跡」
リベリアには、21世紀の課題もあります。1989-1996年の第一次リベリア内戦と、1999-2003年の第二次リベリア内戦で、約25万人が死亡しました。内戦の独裁者チャールズ・テイラーは、国際刑事裁判所で有罪となっています。
「2003年、女性大統領」
そして、復興の象徴も生まれました。2005年、エレン・ジョンソン・サーリーフが大統領に選出され、アフリカ初の女性大統領となります。2011年にはノーベル平和賞を受賞しました。国旗の白い星はアフリカで最初の独立を表す一方、現代もまだ困難が続いているというのが、リベリアの現実です。
ちなみに:「リベリアからの影響」
リベリア国旗は、他のアフリカ国旗のモデルにもなりました。
トーゴ国旗
トーゴ国旗(1960年)は、リベリア国旗を意識的に模倣したものです。横ストライプに星のカントンを組み合わせた構成で、トーゴ記事でも触れたとおり、デザイナーのポール・アヒィがリベリアを参考にしました。
マレーシア国旗
マレーシア国旗(1963年)は、アメリカ星条旗に月星を加えたようなデザインです。14本のストライプとカントンの月星から成りますが、リベリアからの直接の影響かどうかは不明で、諸説あります。
1847年のリベリア国旗が、現代のアフリカ・アジアの国旗に影響を与えたという、隠れた影響力です。
まとめ:解放奴隷の旗、アフリカ最古の独立
今回のリベリア国旗のまとめです。
- 11本の赤と白の横帯(赤6本、白5本)+左上の青いカントン+白い5角星
- 1847年8月24日、独立から約1ヶ月後に正式採択
- デザインは7人の女性委員会(委員長:スザンナ・エリザベス・ルイス)
- 1847年7月26日、リベリア独立宣言(アフリカ最古の独立共和国)
- 起源:1816年アメリカ植民協会、1822年から解放奴隷が西アフリカに入植
- 国名「Liberia」=ラテン語「Liber(自由)」から
- 11本のストライプ=独立宣言の署名者11人(アメリカ星条旗13本との差別化)
- 白い星=「ローン・スター」、アフリカ最古の独立共和国の象徴
- 青のカントン=アフリカ大陸
- アメリカ星条旗との類似は、アメリカ解放奴隷の起源を反映
- 首都モンロビアはアメリカ第5代大統領ジェームズ・モンローにちなむ
- アフリカでエチオピアと並んで植民地化を免れた2国の1つ
- アメリコ・ライベリアン(解放奴隷の子孫、人口の5%)と先住アフリカ民族(95%)
- 1989-1996年第一次、1999-2003年第二次リベリア内戦、約25万人死亡
- 2005年エレン・ジョンソン・サーリーフがアフリカ初の女性大統領に
- 2011年ノーベル平和賞受賞
- トーゴ国旗(1960年)など、他のアフリカ国旗のモデルにも影響
アメリカからアフリカへ渡った人々の旗。リベリアの国旗は、世界で最も独特な歴史背景を持つ、アメリカ星条旗に最も似た国旗であり、アフリカ最古の独立の象徴です。