上半分が白、下半分が赤、中央に白と赤の2色の円が左側に寄って配置されています。グリーンランドの旗は、世界最大の島であり、デンマーク王国の自治領であるこの島の旗です。北欧の旗でありながら、世界で唯一、北欧十字を採用しませんでした。トゥエ・クリスチャンセンのデザインが14対11で勝利して生まれた1枚です。今回はそんなグリーンランド旗の話です。
まずは構成のおさらい
グリーンランド旗の構成は、次のとおりです。
- 横2本の帯(上から):白・赤
- 中央やや左:白と赤で反転した円(上が赤、下が白)
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 白(上の帯):氷河・氷床。国土の80%以上を覆います
- 赤(下の帯):海
- 赤い半円(円の上半分):海に沈む太陽
- 白い半円(円の下半分):氷山・流氷
氷の世界、北極圏のグリーンランドの自然そのものを描いた、極めてシンボリックな1枚です。
北欧で唯一、北欧十字を採用しなかった
グリーンランド旗の、世界的に独特な特徴を見ていきます。
北欧十字諸国
北欧の旗は、伝統的に北欧十字を用います。デンマークは赤地に白十字(ダンネブロー)、スウェーデンは青地に黄十字、ノルウェーは赤地に青十字と白縁、フィンランドは白地に青十字、アイスランドは青地に赤十字と白縁、フェロー諸島は白地に赤十字と青縁です。
そして、グリーンランドだけが北欧十字ではありません。赤と白の円形デザインを採用し、北欧十字旗ファミリーで唯一の例外となっています。
1985年の論争
1985年の旗デザイン論争では、緑白の北欧十字旗と赤白の円形旗が争いました。グリーンランド議会の投票の結果、14対11で円形旗が勝利します。わずか3票差で、北欧十字ではない旗が選ばれたのです。
トゥエ・クリスチャンセン ── デザイナー
グリーンランド旗の設計者を見ていきます。
トゥエ・クリスチャンセン
設計者はトゥエ・クリスチャンセン(Thue Christiansen)です。グリーンランド人(イヌイット系)の教師であり、アーティスト・政治家でもありました。氷河・海・太陽の自然を、最もシンプルに表現した人物です。
1985年6月21日、正式採択
そして1985年6月21日、グリーンランド旗が正式に採択されました。ナショナル・デー(6月21日、夏至・グリーンランドの日)に発効し、以後、毎年6月21日がグリーンランドの旗の日となっています。夏至は極夜が終わる日であり、それがそのままグリーンランドの旗の日になっているのです。
円のデザイン ── 北極の自然
グリーンランド旗の、最も独特な要素を見ていきます。
赤い半円が上、白い半円が下
中央の円は、白と赤で反転しています。円の上半分(赤)は海に沈む太陽を、円の下半分(白)は氷山・流氷を表します。地平線で太陽が海に沈む北極圏の景色を、1つの円で表現しているのです。
白=氷、赤=太陽と海
そして、背景と円の組み合わせにも意味があります。白い帯(上)は氷河・氷床(国土の80%以上)、赤い帯(下)は海、円の赤は沈む太陽、円の白は氷山を表します。グリーンランドの自然のすべてを、極めてシンプルな2色の円形に込めた、世界の旗のなかで最も抽象的・象徴的なデザインのひとつです。
グリーンランドという領土
グリーンランドの基本情報です。
- 正式名:グリーンランド(Kalaallit Nunaat、グリーンランド語で「人間の国」)
- 首都:ヌーク(Nuuk、人口約2万)
- 面積:約216万km²(世界最大の島)
- 人口:約5.7万人
- 公用語:グリーンランド語(カラーリット語)
- 準公用語:デンマーク語・英語
- 法的地位:デンマーク王国の自治領
世界最大の島
グリーンランドは、オーストラリア大陸を除く世界最大の島です。面積は約216万km²で、フランスの4倍以上にあたります。しかし国土の80%以上が氷床に覆われています。国旗の白がそのまま氷床を表しており、地理的事実そのものになっているのです。
Kalaallit Nunaat ── 人間の国
グリーンランドの自称はKalaallit Nunaat(カラーリット・ヌナート)です。カラーリットはグリーンランド・イヌイット(人間)を、ヌナートは国・大地を意味します。あわせて「人間の国」となります。
英語名は誤解?
英語名「Greenland」は「緑の地」を意味します。これはヴァイキングのエイリーク・ザ・レッドが10世紀に命名したものです。移住者を呼ぶための、誇張した名前でした。実際は氷の地でありながら、「緑の地」と宣伝したのです。世界の地名のなかで、最も誤解を招く名前のひとつとして有名です。
世界の物議の中心
そして、21世紀のグリーンランドは国際政治の焦点となっています。2019年、ドナルド・トランプ第45代アメリカ大統領が「グリーンランドを購入したい」と初めて提案し、国際的な物議を呼びました。2025年の第47代就任後はさらに強硬化し、「軍事力行使も排除しない」と発言して国際社会に衝撃を与えます。2026年1月にはダボス会議で「大枠合意のフレームワーク」を宣言しましたが、具体的な内容は不明です。デンマーク政府・グリーンランド政府は一貫して拒否しており、グリーンランド人の約85%がアメリカへの移譲に反対しています(諸説あり、情勢は流動的)。
気候変動の最前線
グリーンランドは、気候変動の影響を最も受ける地域のひとつでもあります。氷床の融解が進み、海面上昇への寄与が指摘されています。国旗の白は、いまや消えゆく氷床をも象徴しているのです。
まとめ:氷河と海、北欧十字を超えた旗
今回のグリーンランド旗のまとめです。
- 上の白+下の赤+中央の白と赤で反転した円
- 1985年6月21日(夏至・ナショナル・デー)に正式採択
- 設計者はトゥエ・クリスチャンセン(イヌイット系のグリーンランド人教師・アーティスト)
- 北欧十字旗ファミリー(デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・アイスランド・フェロー諸島)で唯一、十字を採用しなかった
- 緑白の北欧十字案と14対11で勝利
- 白(上)=氷河・氷床(国土80%以上)、赤(下)=海
- 円の赤=沈む太陽、円の白=氷山・流氷
- 自称「Kalaallit Nunaat(人間の国)」、英語名「Greenland(緑の地)」は10世紀ヴァイキングの誇張命名
- 世界最大の島(オーストラリア大陸除く)、面積約216万km²、人口約5.7万人
- デンマーク王国の自治領
- 2019・2025年、トランプ大統領が購入を提案、国際的物議
- 気候変動で氷床融解が深刻
北極の自然を、最もシンプルに描く。グリーンランドの旗は、北欧十字の伝統を超えた、世界で最も抽象的に自然を表現した1枚です。