黄・青・赤の横三色。エクアドルの国旗を見て「あれ、コロンビアやベネズエラとそっくり…」と思った人は、たぶん多いはずです。実際にそっくりなんです。でも、これは偶然ではなく「同じ国だった頃の記憶」で、3つの国はかつてひとつの国だった、という話を今回は紹介します。
まずは構成のおさらい
エクアドル国旗の構成は、次のとおりです。
- 横三色:上から黄・青・赤
- 黄の帯:横幅が他の2色の2倍(いちばん広い)
- 中央:黄色の帯の上に国章
黄色の帯だけがほかの2色より2倍広い、というのが特徴です。帯の中央には国章が配置されていて、そこにはチンボラソ山、川、蒸気船、コンドルなど、エクアドルの自然と歴史を凝縮した要素がぎっしり詰まっていますが、これは後ほど詳しく見ていきます。
色の意味は、一般的に次のように解釈されています。黄は豊かさ、太陽、農業を表し、広いのは「もっとも豊かな土地」を強調するためです。青は海、空、独立を求めた人々の理想を、赤は独立戦争で流された血を表します。
ただ、エクアドル国旗の色の本当の出自は、色そのものの意味より、もっと面白い歴史にあります。
黄・青・赤は「大コロンビアの色」
エクアドル・コロンビア・ベネズエラ。この3つの国旗は、全部「黄・青・赤の横三色」です。たまたまではなく、もちろん理由があります。
1819年、独立運動家シモン・ボリバルがアンゴストゥラ憲法のもと、現在のコロンビア・ベネズエラを中心に大コロンビア共和国(Gran Colombia)を樹立しました。現エクアドル地域はまだスペイン領で、1822年5月のピチンチャの戦いでスペイン軍を破って解放され、正式に大コロンビアに加わります(パナマも1821年に加入)。
この大コロンビア、あえて訳すなら「スペインから独立した、ひとつの大きな南米連邦」の国旗が、まさに黄・青・赤の横三色だったんです。
このデザインの起源はさらに遡って、ベネズエラの独立運動家フランシスコ・デ・ミランダ(1750-1816)が1806年に考案した旗にあります。「太陽の黄、海の青、流された血の赤」という解釈で、ミランダが独立運動の旗として制作したものでした。
つまり、黄は太陽、青は海および青空、赤は血という基本コンセプトは、ミランダから大コロンビア、そして現在のエクアドルへと、200年以上にわたって受け継がれてきた、ということになります。
1830年、3つの国に「分かれた」
大コロンビアは長くは続きませんでした。地域差や政治的対立で、1830年に解体し、現在のコロンビア、現在のベネズエラ、現在のエクアドルの3つに分かれます(パナマは1903年までコロンビアの一部)。しかし3つの国は、別れた後も「同じ旗の色」をそれぞれ持ち帰りました。これが、現在の3国旗そっくり問題のルーツです。
3つの旗の見分け方は、次のとおりです。
| 黄の幅 | 紋章 | |
|---|---|---|
| エクアドル | 2倍(広い) | 中央に複雑な国章 |
| コロンビア | 2倍(広い) | 紋章なし |
| ベネズエラ | 同じ幅(3色等幅) | 中央に白い星(最近では8つ) |
「黄の幅が広い」「国章がある」のがエクアドル、というのが識別のコツです。
エクアドルが「大コロンビアの三色」に戻ったのは1860年
エクアドルが独立直後(1830年)から現在の旗を使っていたかというと、ちょっと違います。独立直後は、白と青を中心としたデザインを使っていた時期もありました。
転機は1860年9月26日、ガブリエル・ガルシア・モレノ大統領の時代です。「やっぱり大コロンビアの色(黄・青・赤)に戻そう」と決定し、現行の幅比(黄が2倍)が定まりました。1861年に議会で批准され、そして1900年の法改正で、国章の配置まで含めた現行デザインが完全に標準化されています。「色は1860年に戻り、いまの形になったのは1900年」というのが正確な区切り方です。
いったん別の旗にしたけれど、結局ルーツに戻った。大コロンビアの記憶が、それだけ強かった、ということです。
国章の中に、エクアドルの全部が詰まっている
エクアドル国旗の中央にある国章、これがちょっと「情報過多」レベルの作り込みです。代表的な要素を見ていきましょう。
1. 上の太陽と黄道十二宮
国章の上部には、太陽と4つの黄道十二宮のサイン(3月=牡羊、4月=牡牛、5月=双子、6月=蟹)が描かれています。これは1845年3月から6月にかけて起こった「マルシスタ革命」、その後のエクアドルの政治体制を決定づけた出来事を象徴している、と言われています。
2. チンボラソ山と川
シールド下部の左には、エクアドル最高峰チンボラソ山(標高6,263m)が描かれています。その山麓から流れる川はグアヤス川で、海岸地方の経済を支える大河です。
3. 蒸気船「グアヤス」(じつはこれがめちゃくちゃ重要)
川に浮かんでいる蒸気船は、「グアヤス号(Guayas)」という実在の船です。グアヤキルで1841年に建造され、1841年10月9日に就航した、南米の太平洋岸で初めて建造された蒸気船(南米全体としても最初期の自国建造蒸気船のひとつ)として知られています。
産業革命の波が南米にも到達し、自前で蒸気船を作れる工業力を持っていることを誇示するシンボルです。船のマストにはおなじみのカドゥケウス(商業の神ヘルメスの杖)が掲げられ、「商業と工業の発展」を表しています。
4. アンデスコンドル
シールドの上に翼を広げて止まっているのは、アンデスコンドルです。南米でもっとも巨大な飛翔鳥(翼開長3メートル超)で、力・偉大さ・国の守護を象徴しています。
コンドルが翼を広げて、エクアドルを守っている。非常にビジュアルなメッセージです。
まとめ:かつての連邦の遺伝子が、今も3つの国旗を結んでいる
今回のエクアドル国旗のまとめです。
- 黄(2倍幅)・青・赤の横三色+中央に国章
- 黄=太陽、青=海、赤=独立戦争の血
- 色のルーツは1806年フランシスコ・デ・ミランダがベネズエラ独立運動で考案した旗
- 大コロンビア共和国(1819年樹立宣言、現エクアドル地域は1822年5月のピチンチャの戦いで解放され組み込み)が1830年に解体。3カ国(コロンビア・ベネズエラ・エクアドル)が同じ三色を分け継いだ
- エクアドルは1830年独立、1860年9月26日に大コロンビアの三色(黄2倍幅)に復帰、1900年に国章配置まで含めて完全標準化
- 国章中央の蒸気船「グアヤス号」は、1841年にグアヤキルで建造された南米太平洋岸初の蒸気船
- アンデスコンドルが翼を広げて国を守るシンボル
200年前の連邦の夢が、今も3つの国旗を結んでいる。エクアドルの旗は、シモン・ボリバルの統一構想の名残を、いまも色として残している1枚です。