青と白の5本の横帯、左に赤い三角形と白い星。キューバの国旗、エストレジャ・ソリタリア(Estrella Solitaria、孤独の星)です。カリブ海の社会主義国家の旗で、1849年にニューヨークで亡命キューバ人がデザインし、ナルシソ・ロペスが独立闘争で初めて掲げた、19世紀ラテンアメリカ独立の物語を持つ1枚。今回はそんなキューバ国旗の話です。


まずは構成のおさらい

キューバ国旗の構成は、次のとおりです。

  • 横5本の帯:青と白を交互に並べた帯で、青が3本、白が2本
  • 左側(旗竿側):赤い三角形
  • 赤い三角形のなか:白い5角星

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • 青3本:キューバを分割した3つの軍事区(西部・中央部・東部)
  • 白2本:愛国者の純粋な心
  • 赤い三角形:フランス革命のフリジア帽と、自由・平等・友愛、そしてフリーメイソン
  • 白い星:孤独な星。独立と、新生国家の純粋さを表します

アメリカ星条旗の影響、フランス革命の理念、そしてラテンアメリカ独立という、3つの革命の精神が融合した1枚です。


ナルシソ・ロペス ── 亡命革命家

キューバ国旗の起源を見ていきます。

ベネズエラ生まれの革命家

ナルシソ・ロペス(Narciso López、1797-1851)は、ベネズエラのカラカスに生まれました。シモン・ボリバルの独立戦争では、なんとスペイン軍として戦うという複雑な経歴を持ちます。後にキューバへ移住し、キューバ独立を目指すようになりました。

1849年、ニューヨークで亡命

1849年、ロペスはアメリカに亡命します。ニューヨークで亡命キューバ人コミュニティを組織し、キューバ独立運動を主導しました。国旗の基本構想と象徴体系は、フリーメイソン思想に基づくロペス自身のものです。実際のデザイン作画を担ったのは、詩人ミゲル・テウルベ・トロン(Miguel Teurbe Tolón)で、ロペスの依頼を受けて具体的な意匠を起こした主導者でした。そして最初に旗を縫製したのは、トロンの妻エミリア・テウルベ・トロン(Emilia Teurbe Tolón)です。

1849年、国旗誕生

こうして1849年、現代のキューバ国旗が完成しました。青3本と白2本は3つの軍事区と純粋さを、赤い三角形は自由・平等・友愛というフリーメイソン的シンボルを、白い星は独立と新生キューバを表します。

ニューヨークで亡命革命家がデザインした、キューバ独立の旗。これが、その起源です。

1850年、初の使用

1850年5月19日、ロペスの遠征隊がカルデナス(Cárdenas、キューバ北部の都市)に上陸し、キューバの土地で初めて国旗が掲揚されました。しかし、遠征隊はスペイン軍に撃退されてしまいます。

1851年、ロペス処刑

1851年8月31日、再度のキューバ侵入が失敗し、ロペスはハバナで処刑されました。彼は「キューバ独立の最初の殉教者」と呼ばれています。

国旗の赤は、ロペスらの流された血を象徴する、というシンボリズムにつながっていきます。


1902年5月20日 ── 独立と国旗

キューバ国旗が正式に制定されるまでの流れを見ていきます。

1898年、米西戦争

1898年、米西戦争でアメリカがスペインに勝利します。ハバナ湾でのメイン号爆発事件をきっかけにアメリカが介入し、スペインはキューバの独立を承認しました。

1869年4月、独立革命派が国旗を採択

1869年4月、キューバ共和国議会がロペスの旗を国旗として採択し、独立革命派が正式に採用しました。

1902年5月20日、独立と公式掲揚

そして1902年5月20日、キューバが独立します。マクシモ・ゴメス将軍がモロ城(Three Kings' Castle of El Morro)に国旗を掲揚し、ここで正式に公布されました。

1959年、キューバ革命

1959年1月1日、フィデル・カストロ率いる革命がフルヘンシオ・バティスタ独裁を打倒し、キューバ革命が成功します。しかし、国旗は変更されませんでした。

ロシアやベトナムなど多くの社会主義国家が独自の旗を採用したのに対し、キューバは1849年のロペス旗を継承した。これが、キューバの特徴です。


キューバという国

キューバの基本情報です。

  • 正式名:キューバ共和国(República de Cuba)
  • 首都:ハバナ(Habana)
  • 面積:約11万km²
  • 人口:約1,100万人
  • 公用語:スペイン語
  • 宗教:ローマ・カトリック(約60%)、アフリカ系宗教(サンテリア等)

「カリブ海最大の島」

キューバは、カリブ海で最大の島です。長さは約1,250kmに及び、ジャマイカ・ハイチ・アメリカのフロリダに近接しています。

「カストロ兄弟」

キューバの現代史を見ていきます。1959年から2008年までフィデル・カストロ(1926-2016)が指導者を務め、2008年から2018年までは弟のラウル・カストロが、そして2019年から現在まではミゲル・ディアス=カネルが国を率いています。

「アメリカとの対立」

キューバとアメリカの対立は、60年以上に及びます。1959年の革命後に社会主義化し、1961年にはアメリカが反革命攻撃を仕掛けたピッグス湾事件が、1962年には核戦争寸前まで至ったキューバ危機が起こりました。アメリカの経済制裁は60年以上続いています。2014年にはオバマ大統領が国交を回復しましたが、トランプ政権で再び悪化しました。

国旗の青は平和を表しますが、現実には60年の対立が続いてきた。これが、現代のキューバです。

「キューバ音楽」

キューバは、世界的に有名な音楽文化を持ちます。ラテン音楽の中心となったサルサをはじめ、ソン、ルンバ、マンボ、チャチャチャといったジャンルが生まれました。1990年代にはブエナビスタ・ソシアル・クラブが世界的にヒットしています。まさに「カリブ海の音楽の心臓」です。


ちなみに:「テキサス州との偶然の一致」

キューバ国旗は、アメリカ・テキサス州旗とよく似ています。

キューバテキサス州
構成青白5本+赤三角+白星青白赤+星
1つ(孤独の星)1つ(ローン・スター)

両国・州とも、「孤独の星」を象徴としています。キューバではエストレジャ・ソリタリア(Estrella Solitaria、Lone Star)、テキサスではローン・スター・ステート(Lone Star State)と呼ばれます。

直接の関係はないけれど、両地域とも独立闘争で「孤独な星」をシンボルにした。これは、興味深い偶然です。


まとめ:1849年ニューヨーク、孤独の星

今回のキューバ国旗のまとめです。

  • 青と白の5本の横帯に、左の赤い三角形と白い5角星
  • 1849年6月、ニューヨークで亡命キューバ人ナルシソ・ロペスが構想し、詩人ミゲル・テウルベ・トロンが具体的にデザイン、トロンの妻エミリアが初の縫製を行った
  • 1850年5月19日、カルデナス上陸で初めて掲揚
  • 1851年8月31日、ロペスがハバナで処刑(キューバ独立最初の殉教者)
  • 1869年4月、キューバ共和国議会が正式採用
  • 1902年5月20日、キューバ独立と同時にモロ城で公式掲揚
  • 青3本は3つの軍事区、白2本は愛国者の純粋さ、赤三角はフリーメイソンと自由・平等・友愛、白星は独立を表す
  • 「Estrella Solitaria(孤独の星)」の愛称を持つ
  • 1959年のフィデル・カストロ革命後も同じ国旗を継承
  • カリブ海最大の島で、人口は約1,100万人
  • 1962年のキューバ危機、60年以上に及ぶアメリカとの対立
  • サルサ・ソン・ルンバなどラテン音楽の中心地
  • アメリカ・テキサス州旗とも「孤独の星」で共通する

ニューヨークで生まれた、ロペスの旗。キューバの国旗は、ラテンアメリカ・北米・社会主義の3要素を、19世紀から現代まで継承するカリブ海の独立旗です。