緑地に、金色の円の上のヤシの木、金の三日月、そして南十字星。ココス諸島の旗、インド洋に浮かぶオーストラリアの自治領の旗です。ムスリムが多数派という珍しいオーストラリア領で、この旗を作ったのはコンテストで優勝した10代の島の少年でした。今回はそんなココス諸島旗の話です。
まずは構成のおさらい
ココス諸島旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:緑
- ヤシの木:金色の円の上に立つ
- 三日月:金色
- 南十字星:5つの黄色い星
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 緑:島の豊かな植生
- ヤシの木:熱帯の植物と農業の伝統的な暮らし
- 金の三日月:イスラム教(ココス・マレー人の宗教)
- 南十字星:南半球とオーストラリアとの繋がり
ヤシと三日月と南十字星を描いた緑の旗が、インド洋の島の個性を1枚に込めています。
「10代の少年がデザインした旗」
ココス諸島旗の、心温まる起源を見ていきます。
2004年採択、デザインコンテスト
この旗は2003年に作られ、2004年4月6日に採択されました。デザインしたのは島の住民モハメド・ミンコム(Mohammed Minkom)で、10代の頃にデザインコンテストで優勝したものです。島の少年が作った旗が、そのまま島の公式旗になりました。アイスランド(学生)やフェロー諸島(留学生)にも通じる、市民が作った旗の物語です。
「ムスリムが多数派のオーストラリア領」
ココス諸島の、世界でも珍しい特徴を見ていきます。
ココス・マレー人
旗の三日月が象徴するのは、ココス・マレー人です。住民の多数派はムスリムのココス・マレー人で、イスラム教が島の主要な宗教となっています。南十字星(オーストラリア)と三日月(イスラム)が共存する、ココス諸島ならではの組み合わせです。
「ココス王国」 ── クルーニーズ=ロス家
ココス諸島には、ユニークな歴史があります。19世紀から約150年間、クルーニーズ=ロス家がこの島を私的に統治していました。「ココスの王」と呼ばれた一族の領地で、ココヤシ農園を経営し、マレー系労働者を連れてきました。そして1984年、住民投票でオーストラリアへの統合が選ばれます。一族の私的な「王国」からオーストラリア領へという、珍しい成り立ちです。ノーフォーク島とはまた違う、もう1つのオーストラリア領の物語といえます。
「ダーウィンが訪れた島」
ココス諸島の、科学史上の重要性を見ていきます。
1836年、チャールズ・ダーウィン
1836年、チャールズ・ダーウィンがビーグル号でこの島を訪れました。ここでサンゴ礁(環礁)の形成を観察し、それがダーウィンの環礁形成理論のヒントになったといわれます。国旗のヤシの木が立つ環礁が、科学史に名を残しているのです。
ココス諸島という領土
ココス諸島の基本情報です。
- 正式名:ココス(キーリング)諸島(Cocos (Keeling) Islands)
- 首都:ウェスト島(West Island)
- 面積:約14km²
- 人口:約600人
- 公用語:英語(ココス・マレー語も使われます)
- 法的地位:オーストラリアの海外領土
「2つの環礁、27の島」
ココス諸島は、2つの環礁からなります。あわせて27のサンゴ島があり、クリスマス島と並ぶインド洋のオーストラリア領です。多くの住民はホーム島(ココス・マレー人)とウェスト島に住んでいます。
「キーリングの名」
島の別名「キーリング」は、発見者の名に由来します。1609年、イギリスのウィリアム・キーリングがこの島に到達しました。「ココス(ヤシ)」と「キーリング(人名)」を組み合わせた名前なのです。
まとめ:ヤシと三日月、インド洋の島
今回のココス諸島旗のまとめです。
- 緑地に、金色の円の上のヤシの木、金の三日月、南十字星(5つの黄色い星)
- 緑は植生、ヤシは熱帯の植物と農業、金の三日月はイスラム教(ココス・マレー人)、南十字星は南半球とオーストラリア
- 2003年に作られ2004年4月6日に採択
- デザイナーは島の住民モハメド・ミンコム(10代でコンテスト優勝)
- 住民の多数派はムスリムのココス・マレー人(ムスリムが多数派の珍しいオーストラリア領)
- 19世紀から約150年間、クルーニーズ=ロス家が私的に統治(「ココスの王」)
- 1984年、住民投票でオーストラリアへの統合を選択
- 1836年、ダーウィンがビーグル号で訪れ、環礁形成理論のヒントを得た
- 2つの環礁・27のサンゴ島、クリスマス島と並ぶインド洋のオーストラリア領
- 別名「キーリング」は1609年に到達したウィリアム・キーリングにちなむ
- 面積約14km²、人口約600人、首都ウェスト島
ヤシの木と三日月、そして南十字星。ココス諸島の旗は、ムスリムが暮らすインド洋のオーストラリア領を、島の少年のデザインに込めた1枚です。