左上から右下に斜めに分かれた緑と青、緑側に黄金のシラオネッタイチョウ、青側に南十字星、中央の黄金の円に島の地図。クリスマス島の旗は、インド洋に浮かぶオーストラリアの海外領土の旗です。1986年にトニー・カウチが制定し、コンテスト賞金100ドルで選ばれたという、世界の旗のなかで最も予算が小さかった1枚です。今回はそんなクリスマス島旗の話です。
まずは構成のおさらい
クリスマス島旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:左上から右下に対角線で分割(上(旗竿側)が緑、下(旗尾側)が青)
- 緑側(上):黄金のシラオネッタイチョウ
- 青側(下):南十字星(5つの白い星)
- 中央:黄金の円のなかにクリスマス島の地図(緑)
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 青:インド洋、クリスマス島を取り囲む海
- 緑:クリスマス島の大地・熱帯雨林
- 黄金のシラオネッタイチョウ:クリスマス島固有の国鳥
- 島の地図:島の輪郭そのもの
- 南十字星:オーストラリアとの繋がり
島の自然(鳥・大地・海・地図)に、宗主国オーストラリアの南十字星を加えた、極めて密度の高いデザインです。
1986年4月14日 ── 賞金100ドルのコンテスト
クリスマス島旗の、世界で最も予算が小さい誕生の経緯を見ていきます。
100ドルの賞金
1986年、クリスマス島議会がコンテストを開催しました。賞金は100オーストラリアドルで、世界の国旗コンテストで最も予算が小さい部類に入ります。応募総数は69件でした。
ナイジェリア(3,000件、賞金100ポンド)やナミビア(870件、3案融合)と比較しても、極めて小規模なコンテストです。
トニー・カウチ
旗のデザイナーは、トニー・カウチ(Tony Couch)です。シドニー在住のオーストラリア人で、クリスマス島とは直接の関わりはありませんでしたが、当選しました。
島外のオーストラリア人が、クリスマス島の旗をデザインした。これがこの旗の特徴です。
1986年4月14日、発表
そして1986年4月14日、新旗が発表されました。ただし、この時点では非公式の採用にとどまりました。
2002年1月26日、正式採用
そして2002年1月26日(オーストラリア・デー)、正式に採用されました。発表から16年を経ての公式化です。クリスマス島の旗の日も、オーストラリア・デーと同じ1月26日とされています。
16年間、非公式の状態で使われ続けた。興味深い歴史です。
黄金のシラオネッタイチョウ ── 国鳥
旗中央のシンボルである、シラオネッタイチョウの黄金亜種を見ていきます。
「Phaethon lepturus fulvus」
シラオネッタイチョウ(White-tailed Tropicbird)の黄金亜種は、学名を Phaethon lepturus fulvus といい、クリスマス島の固有亜種です。クリスマス島の国鳥であり、「Golden Bosun Bird(黄金のシラオネッタイチョウ)」とも呼ばれます。
「白い熱帯鳥の、黄金版」
通常のシラオネッタイチョウは白い体をしています。しかしクリスマス島の亜種は金色で、島の固有性を象徴しています。
世界で唯一、クリスマス島にしかいない黄金色の鳥。これが国旗の中心シンボルです。
クリスマス島という領土
クリスマス島の基本情報です。
- 正式名:クリスマス島(Christmas Island)
- 首都:フライング・フィッシュ・コーヴ(Flying Fish Cove)
- 面積:約135km²
- 人口:約1,700人
- 公用語:英語
- 法的地位:オーストラリアの海外領土
「クリスマスの日」
国名「クリスマス島」は、1643年12月25日に由来します。イギリス東インド会社の船長ウィリアム・マイナーズが、クリスマスの日に島を発見・命名し、「Christmas Island」と名づけました。
発見日が、そのまま島の名前になっている。これはドミニカ国(コロンブスが日曜日に発見)と並ぶ、命名のパターンです。
「アジア人多数派の島」
クリスマス島には、意外な民族構成があります。中国系が約70%、マレー系が約20%、白人系が約10%です。
オーストラリア領なのに、住民の大半がアジア系。これは独特の構造で、19〜20世紀のリン鉱石採掘の労働者が起源となっています。
「赤い蟹の島」
クリスマス島には、世界的に有名な自然があります。クリスマス島・アカガニ(Christmas Island Red Crab)です。約4,000万〜1億2,000万匹のアカガニが生息し、毎年雨季の始まりに海岸へと大移動します。これは世界的に有名な自然現象で、世界最大級の動物の集団移動といわれます。
国旗の緑は、アカガニの大移動を支える熱帯雨林を表しています。
「亡命者の島」
そして、21世紀の困難もあります。2001年以降、クリスマス島はオーストラリアの亡命者収容施設となりました。「インド洋ソリューション」と呼ばれ、多数の難民が拘留されており、国際的な批判を浴びています。
まとめ:100ドルの賞金、固有の黄金鳥
今回のクリスマス島旗のまとめです。
- 左上から右下の対角線で緑(上)と青(下)の2色、緑側に黄金のシラオネッタイチョウ、青側に南十字星、中央の黄金の円に島の地図
- 1986年4月14日、非公式採用(クリスマス島議会発表)
- 2002年1月26日、オーストラリア・デーに正式採用
- 設計者はトニー・カウチ(シドニー在住)、賞金100オーストラリアドルのコンテスト
- 応募69件、世界で最も予算が小さいコンテストのひとつ
- 青はインド洋、緑は大地・熱帯雨林、黄金のシラオネッタイチョウは固有種シラオネッタイチョウ黄金亜種
- 国名は1643年12月25日(クリスマスの日)にウィリアム・マイナーズ船長が発見したことに由来
- 面積約135km²、人口約1,700人
- 住民の70%が中国系、20%がマレー系
- クリスマス島・アカガニの大移動(年間4,000万〜1億2,000万匹)が世界的に有名
- 2001年以降、オーストラリアの亡命者収容施設として国際的批判
100ドルで生まれた、黄金のシラオネッタイチョウの旗。クリスマス島の旗は、世界で最も予算が小さいコンテストから、島の固有性を1枚に込めた、密度の高い領土旗です。