白地に、左上のユニオン・ジャック、右側に燃えるトーチの盾、それを支えるライオンとコウテイペンギン。イギリス領南極地域の旗は、南極大陸の一部を主張するイギリス海外領土の旗です。定住者のいない、氷と科学の地。ライオンは草の上に、ペンギンは氷の上に立っています。今回はそんなイギリス領南極地域旗の話です。
まずは構成のおさらい
イギリス領南極地域旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:白(ホワイト・エンサイン、十字はなし)という珍しいもの
- 左上のカントン:ユニオン・ジャック
- 右側(フライ側):紋章
紋章の構成は、以下のとおりです。
- 盾:波(海)の上に、燃えるトーチ
- 支え手(左):金のライオン。イギリスを表し、草の上に立つ
- 支え手(右):コウテイペンギン。現地の野生動物で、氷の上に立つ
- クレスト(上):調査船ディスカバリー号
- 標語:「Research and Discovery(研究と発見)」
ライオンとペンギンが向き合う、白い南極の旗です。
「白いエンサイン」 ── 珍しいイギリス海外領土旗
イギリス領南極地域旗の特徴を見ていきます。
多くは青エンサイン
イギリス海外領土の旗は、通常は青エンサインです。フォークランド諸島やケイマン諸島など、ほとんどが青地となっています。
しかし南極地域は白
そして、イギリス領南極地域は白エンサインを使います。十字のない白地のエンサインで、南極の氷と雪を思わせる白です。
バミューダ(赤エンサイン)と並ぶ、珍しい色のイギリス海外領土旗です。
「草のライオン、氷のペンギン」 ── 対照的な支え手
イギリス領南極地域旗の、最も印象的なデザインを見ていきます。
ライオンは草の上
左の支え手は金のライオンで、イギリスを象徴します。このライオンは、故郷イギリスの大地を表す草の上に立っています。
ペンギンは氷の上
右の支え手はコウテイペンギンで、南極の野生動物を象徴します。このペンギンは、南極の地を表す氷の上に立っています。
故郷の草に立つライオンと、南極の氷に立つペンギン。2つの世界を対比させた紋章です。なお、盾の燃えるトーチは探検の灯を表します。
ディスカバリー号とスコット
クレストの調査船ディスカバリー号は、1901年、ロバート・ファルコン・スコットが最初の南極探検で使った船です。標語「Research and Discovery(研究と発見)」は、南極探検家と、現在の科学研究基地への敬意を込めたものです。
国旗が、南極探検の英雄時代と現代の科学を繋ぐという物語です。
「南極条約」 ── 凍結された領有
イギリス領南極地域の、政治的に繊細な点を見ていきます。
重なり合う領有主張
イギリス領南極地域は、南極大陸の扇形の一角を主張しています。しかしアルゼンチンやチリも、重なる地域の領有を主張しており、その評価は政治的立場で分かれます(諸説あり)。
南極条約で「凍結」
そして、重要な国際ルールがあります。1959年の南極条約により、すべての領有権の主張は「凍結」されています。南極は科学的協力と平和利用のための地とされ、軍事活動は禁止されています。
旗は掲げられるが、領有権は南極条約で棚上げされている。これが南極の特殊な地位です。
イギリス領南極地域という領土
イギリス領南極地域の基本情報です。
- 正式名:イギリス領南極地域(British Antarctic Territory、BAT)
- 面積:約170万km²(主張地域)
- 人口:定住者なし(研究基地の職員のみ)
- 法的地位:イギリスの海外領土
「定住者のいない領土」
イギリス領南極地域には、人が定住しません。恒久的に住む人はおらず、ロゼラ基地やハレー基地など、イギリス南極調査所(British Antarctic Survey)の研究基地が置かれています。そこには季節ごとに科学者が滞在します。
まとめ:草のライオンと氷のペンギン、南極の旗
今回のイギリス領南極地域旗のまとめです。
- 白地(ホワイト・エンサイン、十字なし)に左上のユニオン・ジャックと右側の紋章
- 多くのイギリス海外領土の青エンサインと違い、白エンサインを使う珍しい旗(南極の氷と雪)
- 盾は波(海)の上に燃えるトーチ
- 支え手は左に金のライオン(イギリス、草の上)、右にコウテイペンギン(南極の野生動物、氷の上)
- クレストに調査船ディスカバリー号(1901年、スコットの最初の南極探検の船)
- 標語「Research and Discovery(研究と発見)」
- 紋章は1963年8月1日、旗は1998年4月21日に制定(BATは1962年創設)
- 南極大陸の扇形の一角を主張し、アルゼンチン・チリも重なる地域を主張(諸説あり)
- 1959年の南極条約で領有権の主張は「凍結」、科学協力と平和利用の地
- 定住者なし、ロゼラ・ハレーなどイギリス南極調査所の研究基地
- 面積約170万km²(主張地域)
故郷の草に立つライオンと、南極の氷に立つペンギン。イギリス領南極地域の旗は、人の住まない氷の大陸を、探検の歴史と2つの世界の対比に込めた1枚です。