赤地に、尾が2本ある白いライオン。ボヘミアの紋章です。チェコ西部、プラハを擁する歴史的な地方の象徴で、この「双尾のライオン」は、今やチェコという国そのものの象徴になっています。そしてボヘミアの旗(白と赤)は、ポーランド国旗とそっくり。今回はそんなボヘミアの旗の話です。


まずは構成のおさらい

ボヘミアの旗・紋章の構成は、次のとおりです。

  • :白(上)と赤(下)の横2分割
  • 紋章:赤地に、尾が2本ある白いライオン(金の冠と爪)

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • 白いライオン:勇気・気高さ・武勇
  • 白と赤:チェコの歴史的な色

白と赤の旗、そして双尾の白いライオン。チェコの心臓部の象徴です。


「なぜ尾が2本?」 ── 双尾のライオンの謎

ボヘミア紋章の、最も特徴的な点を見ていきます。

最初は尾が1本だった

伝えられるところでは、12世紀、皇帝フリードリヒ(バルバロッサ)が、ボヘミア王ヴラディスラフ2世の武勇を称えて、赤地に白いライオンの紋章を与えたといいます。ただし、このライオンは最初、尾が1本でした。

2本目の尾が加わった

やがて、2本目の尾が加わります。ダリミル年代記によれば、1204年、チェコが反乱を起こしたザクセン人の征服を助けたお礼に、皇帝オットー4世が2本目の尾を認めたとされます(他の史料では確認されず、諸説あり)。そして1253年以降、双尾の白いライオンがボヘミア王国の紋章になりました。軍事的な助けのお礼にライオンの尾が1本増えたというこの伝説は、世界の紋章のなかでも珍しい「2本の尾」の物語です。


「チェコという国の象徴に」

ボヘミア紋章の、現代の役割を見ていきます。

国の象徴

白と赤は、チェコの歴史的な色です。双尾の白いライオンは、今やチェコ共和国そのものの国の象徴になっています。

青が加わって国旗に

現代のチェコ国旗は、ボヘミアの白と赤に、青い三角を加えたものです。この青は、スロヴァキア(汎スラヴの色)やモラヴィアを表すとされます(諸説あり)。ボヘミアの白と赤がチェコ国旗のもとであり、双尾のライオンが国の顔になっています。はたログのチェコ国旗の記事ともつながる話です。


「ポーランドとそっくり」

ボヘミア旗の、見た目の話です。ボヘミアの白と赤の旗は、ポーランド国旗(白と赤)とそっくりです。隣り合う国・地域で、似た色の旗が使われているのです。白と赤の旗はボヘミアもポーランドも同じで、見分けにくい仲間。はたログでおなじみの「そっくり旗」ですね。隣のシレジア(黒い鷲)も、ボヘミア王冠領の一部でした。


ボヘミアという地域

ボヘミアの基本情報です。

  • 正式名:ボヘミア(Čechy/Böhmen)
  • 主要都市:プラハ(Praha)
  • 公用語:チェコ語
  • 法的地位:チェコの歴史的な地方(現在は複数の州)

「黄金のプラハ」

プラハは、ボヘミアの中心であり、神聖ローマ皇帝カール4世の時代に栄えました。プラハ城やカレル橋があり、「百塔の街」とも呼ばれます。

「『ボヘミアン』の語源」

自由奔放な芸術家を指す「ボヘミアン」という言葉は、この地名に由来します。かつてのヨーロッパで、放浪の民とボヘミアが結びつけられたことから生まれた言葉です。

「ビールとガラス」

ボヘミアは、ピルスナービール(プルゼニ発祥)やボヘミアングラスでも知られます。


まとめ:尾が2本の白いライオン、ボヘミア

今回のボヘミア旗のまとめです。

  • 旗は白(上)と赤(下)の横2分割、紋章は赤地に尾が2本ある白いライオン
  • 白いライオン=勇気・気高さ・武勇、白と赤=チェコの歴史的な色
  • 12世紀、皇帝フリードリヒがボヘミア王ヴラディスラフ2世の武勇を称え赤地に白いライオンを与えたと伝えられる(最初は尾が1本)
  • 後に2本目の尾が加わる。ダリミル年代記では1204年のザクセン征服を助けたお礼に皇帝オットー4世が認めたとされる(諸説あり)
  • 1253年以降、双尾の白いライオンがボヘミア王国の紋章に
  • 双尾の白いライオンは今やチェコ共和国そのものの国の象徴
  • 現代のチェコ国旗は、ボヘミアの白と赤に青い三角(スロヴァキアやモラヴィア)を加えたもの
  • ボヘミアの白と赤の旗はポーランド国旗とそっくり、隣のシレジアもボヘミア王冠領の一部だった
  • プラハはボヘミアの中心、神聖ローマ皇帝カール4世の時代に栄えた「百塔の街」
  • 「ボヘミアン(自由奔放な芸術家)」という言葉はこの地名に由来
  • ピルスナービール(プルゼニ)、ボヘミアングラス

尾が2本ある、白いライオン。ボヘミアの旗・紋章は、チェコという国そのものの象徴になった、双尾の獅子の1枚です。