青地に黄色い勝利の十字、その十字からはギリシャ文字のα(アルファ)とΩ(オメガ)が下がる。これがアストゥリアスの旗、スペイン北部、大西洋に面した自治州の旗です。この十字は、722年のコバドンガの戦いで掲げられたと伝わり、レコンキスタ(国土回復)が始まった地の象徴となっています。スペイン王位継承者が「アストゥリアス公(皇太子)」を名乗る地でもある1枚。今回はそんなアストゥリアスの旗の話です。


まずは構成のおさらい

アストゥリアス旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:水色(明るい青。公式の色名は「空色」azul celeste)
  • 中央(旗竿寄り):黄色い勝利の十字
  • 十字から下がる:ギリシャ文字のα(アルファ)とΩ(オメガ)

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • 勝利の十字:レコンキスタの起源を表す
  • αとΩ:始まりと終わり、すなわち永遠と神性を表す

青地に、αとΩを下げた黄色い十字を配した、深い歴史と信仰を込めた1枚です。


「勝利の十字」 ── コバドンガの戦い

アストゥリアス旗の、中心のシンボルを見ていきます。

王が寄進した宝の十字

勝利の十字(Cruz de la Victoria)は、10世紀初め、アストゥリアス王アルフォンソ3世がオビエドの大聖堂に寄進した宝飾の十字です。908年に作られました。

コバドンガの伝説

その芯には、樫の木の十字があります。伝説では、722年のコバドンガの戦いで、アストゥリアス王ペラーヨが掲げた十字とされています。ただし、この十字が実際に使われたという歴史的証拠はありません(諸説あり)。

伝説の勝利の十字が、後世に宝飾の十字として作られ、今は旗のシンボルになった。そんな物語です。

レコンキスタの始まり

そして、世界史的な意味があります。コバドンガの戦い(722年)は、後の歴史で「レコンキスタ(キリスト教勢力によるイベリア半島の国土回復)」の始まりとされました。ここからアストゥリアス王国が生まれます。

スペインのレコンキスタは、この北の山岳地アストゥリアスから始まりました。だからこそ「アストゥリアスこそスペイン、残りは征服された土地」という言葉もあります。


「αとΩ」 ── 始まりと終わり

アストゥリアス旗の、もう1つのシンボルを見ていきます。

黙示録の言葉

十字から下がるα(アルファ)とΩ(オメガ)は、ギリシャ文字の最初(α)と最後(Ω)にあたります。これは「私はアルファであり、オメガである。始まりであり、終わりである」(ヨハネの黙示録1:8)に由来し、永遠と神性を表します。

始まりと終わり、神の永遠を表すαとΩ。深い宗教的な意味が込められています。


「アストゥリアス公」 ── スペインの皇太子

アストゥリアスの、特別な地位を見ていきます。

王位継承者の称号

スペインの王位継承者は「アストゥリアス公/アストゥリアス女公」を名乗ります。これはイギリスの「プリンス・オブ・ウェールズ」に当たる称号です。

プリンセサ・デ・アストゥリアス賞

そして、世界的に有名なものとして、権威ある「アストゥリアス女公賞」(Premios Princesa de Asturias)があります。

アストゥリアスの名は、スペイン王室の皇太子の称号でもある。そんな特別な地域です。


アストゥリアスという地域

アストゥリアスの基本情報です。

  • 正式名:アストゥリアス公国(自治州)(Principáu d'Asturies/Principado de Asturias)
  • 州都:オビエド(Oviedo)
  • 面積:約1万km²
  • 人口:約100万人
  • 公用語:スペイン語(アストゥリアス語も使われます)
  • 法的地位:スペインの自治州

「緑のスペイン」

アストゥリアスは、雨の多い北部の地域です。乾いたスペインのイメージとは違い、緑豊かな「緑のスペイン」と呼ばれます。ピコス・デ・エウロパの山々も広がっています。

「シードルとケルト」

アストゥリアスには、シードル(りんご酒)を高く掲げて注ぐ伝統があります。また、ガイタ(バグパイプ)などケルト的な文化を、隣のガリシアと共有しています。


まとめ:勝利の十字、レコンキスタの地

今回のアストゥリアス旗のまとめです。

  • 青地に、旗竿寄りの黄色い勝利の十字と、十字から下がるα(アルファ)とΩ(オメガ)
  • 勝利の十字はレコンキスタの起源、αとΩは始まりと終わり(永遠と神性)
  • 勝利の十字は10世紀初め、王アルフォンソ3世がオビエドの大聖堂に寄進した宝飾の十字(908年)
  • 伝説では722年コバドンガの戦いで王ペラーヨが掲げた樫の十字とされる(歴史的証拠はない、諸説あり)
  • コバドンガの戦いはレコンキスタの始まりとされ、アストゥリアス王国が生まれた
  • 「アストゥリアスこそスペイン、残りは征服された土地」という言葉も
  • αとΩはヨハネの黙示録1:8「私はアルファでありオメガである」に由来
  • スペインの王位継承者は「アストゥリアス公/女公」を名乗る(英国のプリンス・オブ・ウェールズに相当)
  • 権威あるアストゥリアス女公賞
  • 雨の多い「緑のスペイン」、ピコス・デ・エウロパ、シードル、ガリシアと共有するケルト的文化
  • 面積約1万km²、人口約100万人、州都オビエド

レコンキスタが始まった地の、勝利の十字。アストゥリアスの旗は、スペインの再興の物語の原点を、αとΩの十字に込めた1枚です。