青地の左上にユニオン・ジャック、右側に3匹のオレンジのイルカが円を描く紋章。アンギラの旗は、カリブ海の小さなイギリス海外領土の旗です。1967年から1969年にかけてセントクリストファー・ネイビスから独立を宣言したものの、イギリスが介入して海外領土として残ったという、20世紀の独特な歴史を持つ1枚。今回はそんなアンギラ旗の話です。


まずは構成のおさらい

アンギラ旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:青(ブルー・エンサイン)
  • 左上のカントン:ユニオン・ジャック
  • 右側(フライ側):アンギラ紋章
  • 白い盾は、平和・静けさ
  • 3匹のオレンジ色のイルカが円を描き、団結・強さ・忍耐を表す
  • 下部の青は、カリブ海・信仰・若さ・希望

英連邦旗に3匹のイルカを組み合わせた、典型的なイギリス海外領土旗です。


3匹のイルカ ── 団結・強さ・忍耐

アンギラ旗の、最も特徴的なシンボルを見ていきます。

「Three Dolphins」

3匹のイルカは、円を描くように配置されています。色はオレンジ(ゴールデン)で、海上を跳ねる姿で描かれ、その円形は連続性を表します。

「団結・強さ・忍耐」

3匹のイルカには、3つの伝統的な意味があります。Unity(団結)、Strength(強さ)、Endurance(忍耐)です。これらはアンギラ国民の精神を象徴しています。

「3つの島」?

そして、3匹のイルカは3つの島を表すという説もあります。アンギラには本島に加えて小アンギラや小島々など複数の島があります。ただし「3つの島」という公式の解釈は弱く、「団結・強さ・忍耐」が主要な意味とされています。


1967-1969年 ── アンギラ革命

アンギラ旗には、世界でも独特な歴史があります。

セントキッツ・ネイビス・アンギラ連邦

1967年当時、アンギラはセントキッツ・ネイビス・アンギラ自治州の一部でした。セントキッツ島が主導するこの体制に対し、アンギラ住民はセントキッツの優越に不満を抱いていました。

1967年5月30日、アンギラ革命

1967年5月30日、アンギラ住民がセントキッツ警察を島から追放しました。アンギラ革命(Anguilla Revolution)です。セントキッツから分離したいという思いから起きた、無血革命でした。

「3イルカ旗」

このとき革命派が掲げたのが、3イルカ旗(Three Dolphins Flag)です。白地に3匹のオレンジのイルカと、下に青い帯を配したこの旗は、非公式の独立アンギラ共和国旗として使われ、現代のアンギラ国章の起源となりました。

1969年、イギリス介入

1969年3月19日、イギリスが軍を派遣します。「Operation Sheepskin(羊の皮作戦)」と呼ばれ、ロンドン警察も派遣されました。しかし結果として、アンギラ住民の希望に従い、セントキッツから分離する道がとられました。

1980年、正式に分離

1980年12月19日、アンギラはセントキッツから正式に分離します。イギリス海外領土として認知され、アンギラはイギリス領土として残り、セントキッツ・ネイビスは1983年に独立しました。

1990年5月30日、現在の旗

1990年5月30日、現代版のアンギラ旗が正式に採択されました。革命記念日である5月30日に合わせ、3イルカの紋章を英連邦旗に組み込んだものです。

革命の遺産が、現代の英連邦旗に受け継がれている。これがアンギラ旗の物語です。


アンギラという領土

アンギラの基本情報です。

  • 正式名:アンギラ(Anguilla)
  • 首都:ザ・バレー(The Valley)
  • 面積:約91km²
  • 人口:約1.6万人
  • 公用語:英語
  • 法的地位:イギリスの海外領土

「Anguilla」 ── 「ウナギ」

「アンギラ」(Anguilla)という名前は、ラテン語・スペイン語で「ウナギ」を意味します。島の細長い形がウナギに似ていることに由来し、クリストファー・コロンブスが1493年に命名したとされます(諸説あり)。

ウナギの形をした島というのが、アンギラの由来です。現代の地図で見ると、確かに細長い形をしています。

「ハイエンド観光地」

アンギラは、カリブ海の高級観光地です。「Caribbean's Hidden Gem(カリブ海の隠れた宝石)」と呼ばれ、高級リゾートが多数あり、観光業がGDPの大半を占めています。

「タックスヘイブン」

アンギラは、オフショア金融でも知られています。無税・低税の金融制度を敷いており、「アンギラ・ペーパー」などの暴露事件も起きています。


まとめ:3イルカの革命、英連邦の海外領土

今回のアンギラ旗のまとめです。

  • 青地(ブルー・エンサイン)に、左上のユニオン・ジャック、右側に3匹のオレンジ色のイルカが円を描く紋章
  • 1990年5月30日、現代版を正式採択(アンギラ革命記念日に合わせて)
  • 1967年5月30日の「アンギラ革命」でセントキッツから分離を宣言、1969年にイギリスが介入
  • 1980年12月19日、セントキッツから正式に分離し、イギリス海外領土として残る
  • 3匹のイルカは団結・強さ・忍耐(Unity, Strength, Endurance)
  • 円形配置は連続性
  • 白は平和・静けさ、青はカリブ海・信仰・若さ・希望
  • 革命派の「3イルカ旗」(白地に3イルカと青帯)が現代国章の起源
  • 国名「Anguilla」はラテン語・スペイン語で「ウナギ」、島の細長い形から
  • 1493年にコロンブスが命名(諸説あり)
  • 面積約91km²、人口約1.6万人
  • カリブ海の高級観光地でありタックスヘイブン

3匹のイルカが、アンギラの団結を象徴する。アンギラの旗は、セントキッツからの分離闘争と、イギリス海外領土としての安定を、青と3イルカに込めた1枚です。